2019年11月20日現在、マツダが掲げてきた独自の高級化路線が、少しばかりペースダウンを余儀なくされているようです。独自のブランド価値を築き上げるために価格帯を引き上げる戦略を進めていましたが、足元の販売実績が振るわないことから、少し立ち止まる決断を下しました。理想と現実の狭間で、自動車メーカーとしての難しい舵取りが求められていると言えるでしょう。
米国での新型「マツダ3」実質値下げの背景
戦略の要となる新型「マツダ3」ですが、アメリカ市場では価格を約1割引き上げた結果、販売が低迷してしまいました。この事態を受け、2019年10月の一部改良では、普及価格帯のモデルに安全装備を標準搭載しながらも価格を据え置くという、実質的な値下げに踏み切っています。ブランド力を高めるために安易な値引きを控えてきましたが、工場を稼働し続けるためにも、背に腹は代えられなかったのだと推測できます。
さらに、2019年9月から2019年10月にかけては、アメリカ市場でのインセンティブも引き上げられました。このインセンティブとは、メーカーから販売店に支払われる販売奨励金のことで、実質的な値引きの原資となるものです。SNS上でも「マツダ3はデザインが美しいけれど、値段が高くて手が出なかったから嬉しい」「いきなりの高級化には戸惑っていた」といったユーザーのリアルな声が多数飛び交っています。
大型モデル「ラージ」の投入延期と販売現場の戸惑い
また、マツダが計画していた直列6気筒の大型エンジンを積む新型車「ラージ」の発売も、当初の2021年から2023年3月期へと先送りされました。このモデルは、スポーティーな走りを楽しめる後輪駆動をベースにしています。後輪駆動は、エンジンのパワーを後輪に伝えて走る方式で、高級車によく採用される本格的な仕組みです。それに加えて、外部の電源から直接充電できるプラグインハイブリッド車としての完成度を高める狙いもあると発表されています。
しかし、発売延期の理由は開発面だけではないようです。この「ラージ」モデルは、最低グレードでも400万円、上位になれば700万円に達すると噂されており、社内でも販売戦略が定まりきっていないと囁かれています。実際に販売の最前線に立つディーラーからは、「これほど高額な車を求める新しい客層に対して、どのようにアプローチすればいいのか分からない」という、戸惑いや不安の声が上がっているのが実情です。
マツダの未来に向けた戦略と独自の視点
マツダは2019年度から2021年度にかけてをブランド力を鍛え上げる「足場固め」の期間と位置づけており、2022年度以降に大きな成長を遂げるシナリオを描いています。私は、安売り競争から脱却してブランド価値を高めようとするマツダの挑戦そのものは、非常に素晴らしい試みだと考えています。しかし、長年応援してきたファンを置き去りにするような急激な価格上昇は、少し危険な賭けかもしれません。
魅力的な車作りはマツダの最大の強みですが、それを購入し、乗り続けてくれるユーザーの生活に寄り添うことも同じくらい大切です。利益率を向上させて「稼げるメーカー」になるためには、商品力に見合った丁寧な販売サポートと、顧客が納得できる価格のバランスを見つけ出すことが不可欠でしょう。少し歩みを緩めたこの期間が、マツダにとってさらなる飛躍のための有意義な準備期間となることを、心から期待しています。
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