日本最北の地に位置する学びの園、稚内北星学園大学が今、かつてない大きな曲がり角に立っています。2019年07月12日、斉藤吉広学長は記者会見の場で現在の厳しい収支状況を明かし、大学の存続そのものについて稚内市と本格的な協議に入ることを表明しました。2019年内を目安に今後の方向性が示される予定となっており、地元の教育環境がどう変化するのか、多くの市民が固唾を呑んで見守っています。
今回の事態を受けてSNS上では「最北の大学がなくなってしまうのは寂しい」「メディア学を地方で学べる貴重な場所なのに」といった惜しむ声が広がっています。一方で、「定員割れが続いているなら公金投入も限界があるのではないか」という厳しい意見も散見され、議論は白熱している状況です。斉藤学長は、理事会だけでこの難局を打開する決断を下すのは極めて困難であると語り、街の未来を左右するこの問題を市民全体で考えてほしいと訴えかけています。
国庫補助金の削減が追い打ちに!単科大学を襲う構造的課題
稚内北星学園大学は、情報メディア学部のみを持つ「単科大学」として知られています。単科大学とは、特定の学問領域に特化した教育を行う大学のことで、専門性を深く追求できる点が魅力です。同校は1987年に短期大学として産声を上げ、2000年に現在の四年制大学へと改組されました。現在は「情報テクノロジー」や「地域デザイン」など、時代に即した5つのコースを展開し、最先端のスキルを地域に還元する役割を担っています。
しかし、経営の屋台骨は揺らいでいます。ここ10年間の入学者数は、定員に対して50%から60%程度という「充足率(定員に対する実際の学生数の割合)」の低迷が続いてきました。稚内市からも2016年度以降、毎年約5000万円という多額の補助金が投じられてきましたが、追い打ちをかけたのが国の政策変更です。経営不振の大学に対する「私学助成金」をカットする方針により、国からの補助金は数年で大幅に減額されてしまいました。
具体的な数字を見るとその深刻さが浮き彫りになります。2016年度には1億2000万円あった国庫補助金が、2017年度には8500万円、そして2018年度には7500万円まで急落しているのです。これほどの減収は、地方の小規模大学にとって死活問題と言えるでしょう。編集者としての私見ですが、地方創生が叫ばれる現代において、若者が集まる拠点を失うことは、単なる学校の閉鎖以上の損失を地域にもたらすのではないかと危惧しています。
再建に向けた「経営改善計画執行会議」の再起動と市民の議論
この危機的状況を打破するため、大学側は2008年に設置されたものの、長らく休眠状態にあった「経営改善計画執行会議」を再び動かすことを決定しました。この会議には、市教育委員会の幹部や学識経験者などが広く参加し、多角的な視点から再建の道筋を探ります。大学側が「ボールを市に投げ返した」と表現するように、これはもはや一教育法人の問題ではなく、稚内市という自治体全体の課題として位置づけられたと言えます。
地方大学の存続は、地域の知的インフラを維持するために極めて重要ですが、納税者の理解も欠かせません。ITやメディアの知識を持った若者が地元に残る仕組みをどう構築するかが、今後の議論の焦点となるでしょう。2019年末に出される結論が、大学と地域が共生する新しいモデルケースになることを願ってやみません。私たちは、この北の学び舎がどのような未来を選択するのか、引き続き注視していく必要があるでしょう。
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