多くの家庭の救急箱に必ずと言っていいほど入っている「メンソレータム」という塗り薬ですが、その歴史の裏側に一人の情熱的なキリスト教伝道者の存在があったことをご存知でしょうか。アメリカから来日したウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏は、優れた建築家として知られる一方で、人々の健康を支えるために尽力した人物です。彼は1920年07月18日よりも遥か昔から、この日本という地で信仰と実業の両立を目指してきました。
ヴォーリズ氏は1920年に「近江セールズ(現在の近江兄弟社)」という会社を立ち上げ、アメリカで普及していたメンソレータムの輸入販売を開始しました。そもそも「メンソレータム」とは、鎮痛や殺菌作用を持つ「メントール」と、保湿効果の高い「ワセリン(ペトロラタム)」を組み合わせた名前の由来があります。彼は単に薬を売るだけでなく、その利益を伝道活動や教育、医療支援の資金に充てるという、現代で言う社会起業家のような役割を担っていたのでしょう。
しかし、その後の歩みは決して平坦なものではありませんでした。経営の悪化に伴って一時は商標権を手放すこととなり、その権利は現在おなじみのロート製薬へと引き継がれることになります。SNS上では「ずっと同じ会社だと思っていた」「近江兄弟社のメンタームとどう違うの?」という驚きの声が多く見受けられます。実は、この権利譲渡という苦境を乗り越えて、近江兄弟社が自社ブランドとして再出発させたのが「メンターム」なのです。
専門的な視点で解説しますと、「商標権」とはその商品の名前やマークを独占的に使える権利を指します。この権利が移ったことで、近江兄弟社は看板商品の名前を使えなくなりましたが、彼らは決して諦めませんでした。長年培ってきた製造技術と、ヴォーリズ氏から受け継いだ「誠実なモノづくり」の精神を「メンターム」という新しいブランドに注ぎ込み、再び市場へと返り咲いたのです。この不屈の精神こそが、今もなお愛される理由かもしれません。
私自身の考えとしては、一つの塗り薬がこれほどまでにドラマチックな背景を持っていることに深い感銘を覚えずにはいられません。効率ばかりが重視される現代において、ヴォーリズ氏が貫いた「奉仕のための事業」という考え方は、私たちの心に温かな光を灯してくれます。二つのブランドは現在、それぞれ総合スキンケアブランドとして進化を遂げていますが、その根底にある「肌を守り、癒やしたい」という願いは共通しているはずです。
SNSでは「どちらも使い心地が良くて選べない」といった愛用者の声も目立ちますが、このように歴史を知ることで、いつものケアがより意味深いものに変わるのではないでしょうか。2019年07月18日の時点でも、これら二つのブランドは切磋琢磨しながら、私たちの暮らしに欠かせない存在として輝き続けています。一人の伝道者が持ち込んだ小さな薬が、一世紀近い時を経て、日本中の人々の肌を優しく守り続けているのです。
コメント