かつて欧州の家電市場を席巻したパナソニックが、大きな転換点を迎えています。2019年09月27日現在、同社が次なる成長の柱として白羽の矢を立てたのは、長年主力だったテレビではなく、環境負荷を激減させる「省エネ空調」です。チェコのピルゼン市にある工場では、2018年10月から最新のヒートポンプ式暖房機の現地生産が本格始動しました。
これまでマレーシアから輸出していた体制を現地生産に切り替えた背景には、輸送コストの削減だけでなく、爆発的に増える欧州の需要に即応したいという強い意志が感じられます。SNS上でも「日本企業の技術が欧州の環境政策を支えるのは誇らしい」といった期待の声が上がる一方で、「競合他社にどこまで食い込めるか」という冷静な視線も注がれているようです。
ここで注目すべき「ヒートポンプ」とは、外気の熱を効率よく取り込み、冷媒を圧縮することで熱を生み出す技術を指します。この熱でお湯を沸かし、床暖房などに活用する仕組みですが、従来のガスボイラー式と比較してCO2排出量を約5分の1に抑えられるのが最大の魅力でしょう。まさに、地球温暖化対策の切り札とも呼べる画期的なシステムなのです。
欧州の厳しい環境規制を追い風にシェア奪還を狙う
欧州連合(EU)は2020年までに再生可能エネルギーの比率を20%に引き上げる高い目標を掲げており、ヒートポンプはこの「再エネ」の枠組みに含まれています。フランスでの補助金制度や、ノルウェーにおける2020年からの石油ボイラー販売禁止など、各国政府の強力な後押しも、パナソニックにとってはこれ以上ない追い風となっているはずです。
しかし、この市場はダイキン工業や三菱重工といった強豪がひしめく激戦区でもあります。パナソニックの欧州空調事業を統括する有薗正樹氏が「現在はシェア3位以内に入っていない」と認める通り、先行するライバルとの差は小さくありません。そこで同社は2019年から営業人員を2割増員し、その戦力を省エネ空調へ集中させるという背水の陣を敷いています。
さらに、スウェーデンの換気大手システムエアー社との提携により、2019年度中には住宅向け換気システム事業への参入も予定されています。単に暖めるだけでなく、室温を保ちながら空気を入れ替えるトータルな省エネ提案こそが、競合との差別化ポイントになるでしょう。2025年までに売上高を5倍に伸ばすという目標は、非常に野心的な挑戦だと言えます。
私個人の見解としては、テレビ事業で培った「イタコナ(分解調査)」の精神を、空調という新たな戦場に持ち込んだ点に注目しています。他社製品を徹底的に分析し、コストと効率を追求する執念があれば、再び「Panasonic」の名が欧州の家庭の主役になる日は近いかもしれません。日本が誇る「省エネ技術」の真価が、今まさに試されているのです。
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