今、日本の大学で「研究費の集め方」に劇的な変化が起きています。インターネットを通じて不特定多数の人々から資金を募る「クラウドファンディング(CF)」を活用し、寄付者に対して単なるお礼の品を送るだけでなく、研究そのものを肌で感じる「参加体験」を提供する試みが広がっているのです。これは、好きな自治体を応援する「ふるさと納税」の大学版とも言える画期的な仕組みとして注目を集めています。
SNS上でも「自分の推し研究を直接応援できるのが嬉しい」「普段入れない大学の裏側を覗けるのはワクワクする」といったポジティブな声が相次いでいます。徳島大学埋蔵文化財調査室では、2019年06月から学内の遺跡発掘調査に向けた資金調達を開始しました。ここでは5000円以上の寄付を行うことで、実際に石器や土器などの遺物に触れ、それらを復元する整理作業を体験できるという、歴史ファンにはたまらない特典が用意されています。
当初、大学側はロゴ入りグッズやTシャツといった返礼品を用意していましたが、準備の手間に反して寄付者の反応は限定的でした。しかし、活動の内容を直接体験できる形式へ切り替えたことで、状況は一変します。例えば2017年04月には、水空両用ドローンの開発資金として約132万円の調達に成功しました。同年2017年07月から09月にかけては、寄付者が実際にドローンを操縦する体験会が開催され、大きな盛り上がりを見せたのです。
こうした取り組みは、資金難に喘ぐ大学側にとっての救世主となっています。文部科学省が2016年に実施した調査によれば、国立大学への運営費交付金は2004年度に比べて約12%も減少しており、研究者の4割が「10年前より研究費が減った」と回答しています。こうした背景があるからこそ、市民の共感を得て直接支援を仰ぐクラウドファンディングは、研究を継続するための切実かつ希望に満ちた選択肢となっているのでしょう。
研究者と社会をつなぐ「体験」の価値
この仕組みの素晴らしい点は、お金のやり取り以上の価値が生まれることです。筑波大学の睡眠研究プロジェクトでは、2018年05月に約360万円の寄付が集まりました。支援者の中には深刻な不眠に悩む方も多く、研究機器を貸し出して睡眠データを分析する試みも行われました。研究者にとっては、自身の探求が社会の誰を救うのかを再確認する貴重な機会となり、研究への意欲(モチベーション)が飛躍的に高まるきっかけとなっています。
また、大学の研究室に眠る高度な技術を民間企業が活用する「産学連携」のきっかけにもなっています。宇都宮大学のキノコ栽培研究では、高額寄付の返礼として専門的な成分分析を提供したところ、関連企業からの申し込みが相次ぎました。大学独自の高精度な分析機械を利用できることは、企業にとっても自社製品の魅力を消費者に伝える強力な武器となります。研究室の扉を開くことが、新たなイノベーションの芽を育てているのです。
私は、この「大学版ふるさと納税」の流れを心から歓迎します。専門用語で「アカデミア」と呼ばれる学問の世界は、往々にして閉鎖的になりがちですが、市民がサポーターとして関わることで、科学がより身近なものへと変わるはずです。寄付を通じて最先端の知的好奇心を満たし、同時に日本の未来を作る研究を支える。そんな豊かで知的な交流の輪が、2019年現在の閉塞感漂う研究現場を明るく照らしていくに違いありません。
コメント