日本の食卓に欠かせないカツオですが、その最前線では驚くべきテクノロジーの導入が進んでいます。宮崎県日南市に拠点を置く「浅野水産」は、人工知能、いわゆるAIを活用した画期的な漁場選定システムの開発に着手しました。この試みは、近年続いている漁獲量の減少という厳しい現実に立ち向かうための切り札として、2022年01月01日の実用化を目指しています。
SNS上でも「漁師の勘がデータ化されるのはすごい」「伝統と最新技術の融合だ」と、期待を寄せる声が数多く上がっており、業界全体から熱い視線が注がれているようです。同社の浅野龍昇経営企画マネージャーは、AIによる効率化によって、たとえ水揚げ量が減ったとしても、利益をしっかりと確保できる体制が整えられると確信しています。
20年分のビッグデータが予測する「黄金の漁場」
このシステムの核となるのは、過去約20年分にわたる膨大な操業日誌のデータです。そこには、いつ、どこで、どの種類の魚がどれだけ獲れたのかという、ベテランの経験が数値化されて蓄積されています。これに最新の海水温や気象条件、潮流といった「ビッグデータ」を掛け合わせ、コンピューターに自ら学習させる「機械学習」を行うことで、最適なポイントを導き出すのです。
2019年08月15日現在はシステムの基盤を整える段階にあり、2020年からはカメラやセンサーを用いた実証実験が始まります。カメラが捉えるのは、カツオの群れを示唆する「海鳥の動き」であり、センサーはリアルタイムの海水温を精密に測定します。これらの情報をフィードバックすることで、予測の精度を極限まで高めていく狙いがあるのでしょう。
さらに注目すべきは、船上で迅速にデータ解析を行う「エッジコンピューティング」の採用です。これは通信速度が限られる海上でも、クラウドに頼らず端末側で瞬時に判断を下せる技術のことで、まさに現代の「デジタル羅針盤」と呼ぶにふさわしい機能だと言えます。2021年の最終確認を経て、翌年には待望の新造船がデビューする予定です。
スマート漁船への転換で実現する「持続可能な漁業」
現在活躍している「第五清龍丸」は119トンという大型船ですが、新たに建造される船は19トンと小型化されます。一見すると規模縮小のように思えますが、これこそが戦略的な「効率化」の核心です。大型船は水揚げ量が多い分、限られた大規模漁港にしか入港できませんが、小型船であれば柔軟な入札方式や入港先の選択が可能になり、適正な価格での取引が期待できるでしょう。
新造船にはAIだけでなく、人間の能力の約6割まで進化した「自動釣りロボット」の導入も計画されています。これにより、人手不足や船員の高齢化という深刻な課題を解消するだけでなく、船内の個室化といった居住環境の改善も図ることで、若い世代が誇りを持って働ける環境を整えます。まさに漁業の「働き方改革」とも言える取り組みではないでしょうか。
宮崎県は1994年以降、近海カツオ一本釣りの漁獲量で日本一を独走しており、浅野水産はその牽引役です。私は、こうした伝統ある産業がテクノロジーを受け入れ、進化しようとする姿勢に、地方創生の力強いモデルケースを感じずにはいられません。効率化を追求しつつも、海の恵みを大切に守り抜く彼らの航海は、日本の水産業の新しいスタンダードとなるはずです。
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