2019年08月26日、日本のビジネス界におけるジェンダーバランスの現状に一石を投じる議論が注目を集めています。現在、東京証券取引所第1部に上場している企業のうち、女性の取締役を選任しているのは全体の約3割に留まっているのが実情です。この数字は欧米諸国と比較して低いだけでなく、実はトルコやインドといった国々と比べても、日本が大きく遅れをとっていることを物語っています。会社役員育成機構の代表理事を務めるニコラス・ベネシュ氏は、この背景には日本特有の構造的な課題が潜んでいると鋭く指摘しました。
ベネシュ氏の分析によれば、役員層に女性が少ないという現状は、その土台となる「中間管理職」の女性不足をそのまま鏡のように映し出した結果だといえるでしょう。SNS上でもこの話題は大きな反響を呼んでおり、「役員だけを無理に増やしても、現場が変わらなければ意味がない」といった本質を突く意見や、「ロールモデルが不在のままではキャリアを描けない」という切実な声が数多く上がっています。まずはピラミッドの中核を成す管理職層において、いかに女性を育てるかが、日本経済全体の活性化を左右する鍵となるはずです。
具体的に女性取締役を増やすためには、単なる掛け声だけではなく、生活に直結する環境整備が欠かせません。子育て支援の充実はもちろん、テレワークなどの柔軟な働き方の導入、さらには男性の積極的な家事参加を促す社会意識の変革が求められています。企業側は自社の組織内に、女性の昇進を阻む見えない壁、いわゆる「ガラスの天井」や、形骸化した古い慣習が残っていないかを厳しく自問自答すべき時期に来ています。現状維持の姿勢を脱却することこそが、次世代のリーダーを生む土壌を耕す第一歩になるでしょう。
ここで言う「ダイバーシティ(多様性)」とは、単に属性の異なる人を混ぜることではありません。性別、国籍、経歴などが多様な人々が自由闊達に議論を戦わせることで、これまでにない革新的なアイデアが生まれ、最終的には企業の利益という形で結実することを指す専門用語です。しかし、日本企業の多くは、いまだに「波風を立てない同質な人材」を好む傾向にあります。こうした同質性の追求は、変化の激しい現代において、意思決定の硬直化を招くリスクを孕んでいると私は危惧しています。
数値目標の罠を越え、真の「人材資源」活用へ
懸念されるのは、形だけの「女性枠」を設けて満足してしまう安易な姿勢です。「とりあえず女性を1人選べばよい」という数値目標の達成のみを目的にした登用では、多様性が持つ本来のパワーを引き出すことは難しいでしょう。企業にとって、人材とは価値を生み出す最大の「資源」に他なりません。そのリソースを最大限に活用するという視点が欠落したままでは、真の意味での経営改革は遠のいてしまいます。数合わせの議論を卒業し、いかに異能を組織の強みに変えるかという、本質的な議論が今こそ望まれます。
これからリーダーを目指す女性たち自身のキャリア形成についても、戦略的な視点が必要になるでしょう。ライフイベントによる制約が少ない若いうちに、海外赴任や現場の第一線など、本社以外のポストで多様な経験を積んでおくことが将来の武器になります。また、特定の分野において「この人でなければ」と言わしめるほどの圧倒的な専門性を磨き、代替不可能な存在を目指すことも有力な選択肢です。多様な経験と深い専門性の掛け合わせこそが、役員という重責を担うための強固な基盤となっていくに違いありません。
私個人の見解としては、女性取締役の登用は単なる「社会正義」の問題ではなく、企業が生き残るための「成長戦略」そのものであると考えています。多様な視点がない組織は、市場のニーズの変化に鈍感になり、やがて競争力を失う運命にあります。今回のベネシュ氏の提言は、日本企業が「阿吽の呼吸」という心地よい閉鎖空間から脱却し、開かれた議論を通じて進化するための重要なマイルストーンとなるでしょう。2019年08月26日のこの提言が、日本経済の新たな一歩となることを期待して止みません。
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