いよいよ本格的な株主総会のシーズンに突入しました。株主総会で企業が最も重要視して報告すべきことは、その会社が継続的に価値を創造していく力がどれほどあるかを示すことだと言えるでしょう。NEC会長の遠藤信博氏は、会社の価値創造力は、社内コミュニケーションに大きく左右されるとの見解を示しています。
企業は従業員を雇用し、その個々の能力を最大限に発揮してもらうことで価値を生み出します。例えば、一人の持つ力量をAと表現した場合、100人の従業員を雇用すれば、単純に100Aの力を得たことになります。しかし、もしこの100人が一年間、社内で全くコミュニケーションを取らなかったと仮定してみましょう。個人の成長による力の向上をAに含めて考えても、一年が経過しても会社の力は100Aのまま停滞してしまうのです。
一方で、部署や組織の垣根を超えて特定のテーマについて対話を図れば、議論を通じて新たな**「知恵」や着想が必ず生まれるでしょう。これは古くから「三人寄れば文殊の知恵」とも言われているように、集合的な対話がもたらす効果です。このコミュニケーションによって追加される新たな力をBとすれば、100人による議論からは100Bという価値が追加されることになります。遠藤会長は、このコミュニケーションによって生まれる新たな価値**こそが、まさしく企業の真の価値ではないかと提起しているのです。
従業員の雇用だけで得られる100Aの力に留まってしまうのか。それとも、質の高いコミュニケーションの場を設定することで、さらに100Bの価値を創出できるのか。企業にとって、この差は計り知れないほど大きなものになります。そして、この社内コミュニケーションの場をいかに効果的に設計し、提供するかこそが、マネジメントの重要な役割だと遠藤会長は強調しています。
マネジメント層にしか分からないことは、コミュニケーションの場に必須となる議論のテーマ設定と、そこに誰を集めることが最も効果的であるかという判断です。また、頭で「理解」したことが企業の価値となる「行動」に移るためには、時間をかけた**「議論」を通じた「腹落ち」が不可欠です。専門用語である「腹落ち」**とは、単に頭で理解するだけでなく、心から納得し、主体的に行動に移せる状態になることを意味します。これもまた、マネジメントが責任をもって実現させるべき重要な任務と言えるでしょう。
この考え方は、2019年6月10日の記事公開当時、多くのビジネスパーソンや経営層から「企業成長の普遍的な真理だ」として大きな反響を呼んだことでしょう。特に、知識やアイディアを共有し、新たな価値を創造するナレッジ・マネジメントの重要性が叫ばれる現代ビジネスにおいて、遠藤会長が提言する組織を活性化させるコミュニケーション戦略は、企業経営における本質的な課題を浮き彫りにしています。
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