2019年、世界の「ものづくり」の現場に冷たい風が吹き荒れています。製造業の景気動向を占う先行指標として注目される工作機械の受注が、かつてないスピードで減速しているのです。一般的に「工作機械」とは、金属を削ったり穴を開けたりして部品を作るための機械を指し、その精度の高さから「マザーマシン(機械を作るための機械)」とも呼ばれます。この受注が減るということは、世界中のメーカーが新しい設備投資を控えていることを意味しており、経済の先行きに対する警戒感が強まっている証拠と言えるでしょう。
日本工作機械工業会は2019年09月26日、今年の受注見通しを大幅に引き下げる決断を下しました。当初掲げていた年間1兆6000億円という目標は、米中貿易摩擦の激化という荒波に飲み込まれ、1兆2500億円前後へと修正されています。もしこの予測通りに着地すれば、前年比で約3割ものマイナスとなります。これは、世界金融危機を招いた2009年のリーマン・ショック以来となる歴史的な下落幅であり、現場の緊迫感は日増しに高まっているのが現状です。
米中貿易摩擦の直撃と自動車業界の沈黙
今回の急ブレーキの背景には、長期化する米中対立が色濃く影を落としています。2019年01月から08月までの累計受注額は8716億円にとどまり、前年同期比で30.6%減という厳しい数字を叩き出しました。特に2019年08月単月の受注額は884億円まで落ち込み、実に6年4カ月ぶりに900億円の大台を割り込んでいます。SNS上では「製造業の冷え込みが想像以上だ」「設備投資が止まれば日本の強みである技術力も停滞しかねない」といった不安の声が数多く投稿されています。
特に深刻なのが、日本の基幹産業である自動車関連の低迷です。電気自動車へのシフトや自動運転技術の進展という大きな転換期にありながら、現在は新型車の投入が少なく、完成車メーカー各社は投資計画の延期を余儀なくされています。地域別で見ても、中国を含むアジア圏だけでなく、これまで堅調だった米国向けの受注さえも2019年08月時点で前年同月比32.4%減と落ち込み、世界的な「買い控え」の波が押し寄せています。
2020年の5G関連投資と回復への期待感
こうした中、日本工作機械工業会の飯村幸生会長は、2020年04月から06月ごろを景気持ち直しの転換点と見ています。回復の鍵を握るのが、次世代通信規格「5G」のインフラ整備に伴う設備需要です。スマートフォンや通信基地局などの高精度な部品製造には、日本の高度な「高精度加工」や「自動化技術」が不可欠です。2018年には過去最高の1兆8157億円という受注額を記録した実績があるだけに、ポテンシャルは十分に備えています。
私自身の見解としても、現在の受注急減は一時的な「嵐」のようなものだと考えています。各国の経済刺激策が効果を発揮し、5Gの実用化が本格化すれば、製造業の息吹は必ず戻ってくるでしょう。不透明な情勢の中でも、日本の技術者は牙を研ぎ澄ましているはずです。今こそ将来の成長に向けた「攻め」の姿勢を維持しつつ、世界的な需要回復のチャンスを逃さないための準備が、官民一体となって求められています。製造業の明るい未来は、この苦難の先に待っているはずです。
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