「伊予の小京都」として親しまれる愛媛県大洲市が、これまでの常識を覆す大胆な観光プロジェクトを始動させました。2019年09月25日、市が発表した構想によれば、なんと本物の「大洲城」に宿泊できる「城主体験」がスタートします。これは単なる宿泊施設の提供ではなく、歴史的建造物が持つ本来の機能を現代に蘇らせる、極めて文化的な試みとして注目を集めています。
SNS上では「1泊100万円という価格設定に驚いたけれど、お城を独占できるなら安いくらいかも」「歴史を守るための新しい形として応援したい」といった驚きと期待の声が溢れています。単に古城を眺めるだけの観光から、自らが歴史の主人公としてその空間に身を投じる「体験型観光」へのシフトは、旅慣れた富裕層や日本文化を愛する世界中のファンにとって、この上ない魅力となるでしょう。
時を超えた演出!伍代夏子さんを招いた豪華な実証実験
2019年11月08日には、来春の本サービス開始に先駆けて、初の実証実験が実施される予定です。ゲストには、大洲市名物の気象現象「肱川あらし(ひじかわあらし)」を歌った縁で観光大使を務める歌手の伍代夏子さんが招かれます。肱川あらしとは、冷え込んだ朝に霧が川を伝って海へと流れ出す幻想的な自然現象のことで、大洲を象徴する冬の風物詩として知られています。
実験当日は、約400年前の入城シーンを再現する本格的な演出が検討されています。夕闇に包まれる本丸にホラ貝と太鼓の音が響き渡り、馬に乗った城主が姿を現すと、鉄砲隊が祝砲で迎えるという、まるで映画のワンシーンのような体験が用意される見込みです。こうした細部へのこだわりこそが、単なる「ホテル」ではない「城主としての時間」を演出する鍵となるに違いありません。
名勝「臥龍山荘」での朝食と文化財保存への想い
翌朝には、明治期の粋を集めた名建築「臥龍山荘(がりゅうさんそう)」での朝食が振る舞われます。ここは「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」でも星を獲得した名勝で、借景を利用した美しい庭園が見どころです。愛媛県出身の茶人、木村宗慎氏が監修を務めるこのおもてなしは、かつて迎賓施設として使われていた山荘の本来の姿を取り戻す試みでもあります。
私が編集者として特に注目したいのは、この事業が「文化財の保存」と直結している点です。1日1組限定、年間30日程度の利用に絞ることで建物の負荷を抑え、得られた収益はそのまま城や古民家の修繕費に充てられます。建物を「凍結保存」するのではなく、適切に使いながら次世代へ引き継ぐこの手法は、日本の地方自治体が抱える文化財維持の課題に対する一つの理想的な回答と言えるでしょう。
広域連携で描く「瀬戸内観光」の新たなビジョン
大洲市はさらに、隣接する内子町との観光連携も強化しています。2019年07月には「せとうち観光推進機構」など官民5者による協定を締結しました。これまで個別に活動していた地域が手を取り合うことで、道後温泉を擁する松山市に負けない魅力を発信しようとしています。里山の暮らしや伝統産業である木蝋(もくろう)など、この地にしかないコンテンツを欧米の観光客に届ける計画です。
今回の城主体験を「呼び水」として、市内の二の丸には一般客も利用できる絶景カフェが新設され、加藤家住宅などの古民家を改装したホテル展開も進んでいく予定です。点から面へと広がるこのまちづくりが、大洲の静かな町並みにどのような新しい風を吹き込むのか、今後の展開から目が離せません。歴史を愛する一人として、この「100万円の夢」が地域経済を潤す光となることを切に願います。
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