アメリカのトランプ大統領は、2019年10月3日、北朝鮮が前日に実行した弾道ミサイルの発射について、あえて厳しい追及を避ける姿勢を鮮明にしました。ホワイトハウスで記者団から「今回はやり過ぎではないか」と問われた際も、大統領は「状況を見守ろう」と述べるに留めています。北朝鮮側が対話に意欲的であることを強調しており、近く直接の話し合いが行われる見通しを語りました。
今回の発射に対するトランプ氏の「不問」とも取れる態度は、対話の継続を何よりも優先したいという強い意志の表れと言えるでしょう。2019年6月末に行われた3回目の米朝首脳会談以降、停滞していた実務者協議をようやく再開できるチャンスが巡ってきました。実務者協議とは、トップ同士の合意を具体的な行動に移すための、外交官や専門家による詳細な詰め作業を指す重要なプロセスです。
SNS上では「ミサイルを撃たれても対話を優先するのは弱腰ではないか」と不安視する声がある一方で、「破滅的な衝突を避けるための粘り強い交渉だ」と支持する意見も飛び交っています。トランプ大統領の強気なイメージとは裏腹な、この柔軟な(あるいは打算的な)対応に、多くの有権者が注目しているのは間違いありません。国際社会もまた、このギリギリの駆け引きの行方を固唾をのんで見守っています。
大統領選を控えたトランプ氏の焦りと外交戦略
なぜトランプ大統領は、挑発とも取れるミサイル発射を静観しているのでしょうか。その背景には、2019年現在の彼が置かれた厳しい国内情勢が深く関わっています。野党・民主党による弾劾調査(大統領の不正を追及し、罷免を検討する手続き)が本格化しており、政権運営は困難を極めています。さらに、これまで順調だったアメリカ景気にも減速の兆しが見え始め、支持基盤を固めるための「材料」を必要としていました。
来る2020年の大統領選挙に向けて、目に見える外交成果を誇示したいという狙いが透けて見えます。北朝鮮問題の解決を「自分にしかできない偉業」としてアピールすることで、支持者の関心を国内の不祥事から逸らそうとしているのでしょう。しかし、ミサイル技術の進歩を許したまま対話を急ぐ姿勢は、日本の安全保障にとっても決して他人事ではありません。平和への一歩が、危うい妥協の上に築かれないことを切に願います。
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