2019年6月20日、中東情勢は一気に緊迫の度合いを深めました。イランがアメリカの最新鋭の無人偵察機を撃墜したことで、アメリカのトランプ大統領は「我々は我慢しない」と断固たる姿勢を示し、対抗措置を講じる可能性を示唆したのです。トランプ氏は、撃墜された場所は「国際空域」であり、イランの行為は国際法上不当であると厳しく非難しています。一方で、「意図的な撃墜だとは信じがたい」とも発言しており、全面的な軍事衝突という最悪の事態は避けたいという意向も透けて見えるようです。
この事件について、トランプ大統領はホワイトハウスでのカナダのトルドー首相との会談の冒頭で、「イランはひどい過ちを犯した」と重ねて批判しました。具体的な報復の内容については、「多くは語らない。(いつかは)あなた方もわかるでしょう」と述べるにとどめていますが、アメリカはすでに2019年6月17日に、イランに対抗するための米兵1,000人の中東への増派を決定したばかりであり、緊張が高まっている状況でした。
特にトランプ大統領が「米兵に死傷者が出ていないことがとても重要だ」と強調した点は注目に値します。この発言からは、無人機の撃墜という事態を、両国の緊張が過度にエスカレートする「戦争の口実」にするのではなく、冷静に対応しようという意図が読み取れるのではないでしょうか。この一連の動きは、米国内はもちろん、世界中のSNSでも大きな反響を呼びました。イラン側が「いかなる侵入にも断固対処する」と強硬姿勢を示す一方、国際社会はアメリカの軍事行動への懸念から「戦争だけは避けるべきだ」という意見が多く見受けられました。
しかし、事態はさらに緊迫します。アメリカの大手メディアであるニューヨーク・タイムズの電子版は、2019年6月20日に複数の米政府当局者の話として、トランプ大統領が、無人機撃墜への報復としてイランに対する軍事攻撃を一時的に承認していたと報じました。これは、イランのレーダーシステムやミサイル関連施設を標的とする限定的な攻撃計画だったとされています。
この計画では、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)やポンペオ国務長官、そしてCIA(米中央情報局)のハスペル長官といった政権内のタカ派と呼ばれる主要メンバーが攻撃に賛成していたようですが、米軍のトップである高官たちは、イランのさらなる挑発を招く可能性を懸念して難色を示したといいます。そして、驚くべきことに、軍事攻撃は2019年6月20日の夜になって、トランプ大統領の指示により作戦準備が停止されたのです。軍事攻撃の選択肢自体が完全に排除されたわけではないものの、土壇場での「中止」という決断は、トランプ政権の慎重な姿勢を物語っているといえるでしょう。
無人機撃墜の真相と米国の外交戦略
今回の無人機撃墜事件では、最も肝心な事実認識において、米イラン間で真っ向から主張が対立しています。中東地域を管轄する米中央軍は、イランの精鋭部隊が同国南部から発射した地対空ミサイルによって、ホルムズ海峡周辺の「国際空域」を飛行していた無人機が撃墜されたと主張しています。これに対し、イランのザリフ外相は、「領空を侵犯した」ため撃墜したと反論しており、真実は藪の中です。
トランプ大統領は、このような極秘性の高い機密事項を協議するため、2019年6月20日に、議会与野党の指導部をホワイトハウスの「シチュエーションルーム」(危機管理室)に招集し、イラン情勢について協議を行いました。シチュエーションルームとは、ホワイトハウスの地下にあり、軍事作戦の立案や各国首脳との極秘のやり取りなどに使われる、非常に機密性の高い部屋です。
協議を終えた後の反応は、米国の政治における二極化を反映しています。共和党上院トップのマコネル院内総務は、政権が「熟慮した上での対応を検討している」と述べて、トランプ政権の対応を支持する姿勢を見せました。一方で、民主党上院トップのシューマー議員は、「政権が誤ってイランとの戦争を始めることを懸念している」と、軍事衝突への強い懸念を表明しています。
民主党内では、イランに対する軍事攻撃に踏み切る場合は、必ず議会の承認が必要だという意見が多数を占めています。トランプ政権が、このタイミングで議会指導部を招いたのは、イランの脅威に関する情報を事前に開示し、仮に攻撃を実施せざるを得なくなった場合でも、議会からの理解を得やすい環境を整えておくための布石を打った可能性もあるのではないでしょうか。軍事衝突を回避したいというトランプ大統領の意向と、議会との協調を図る戦略が、この土壇場での「攻撃中止」という決断を生んだのかもしれません。私たちは、トランプ政権が今後どのような外交と軍事のバランスを取っていくのか、その動向に細心の注意を払う必要があるでしょう。
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