2019年5月27日、安倍晋三首相(当時)と「令和」初の国賓として来日したトランプ米大統領(当時)による共同記者会見が行われました。安倍首相は冒頭、「日米同盟の絆は世界で最も緊密な同盟となった」と両国の強固な連携をアピール。しかし、その後の質疑応答では、安全保障や貿易といった重要課題において、必ずしも一枚岩ではない両首脳の「温度差」や「立場の違い」が浮き彫りになりました。
最も鮮明な「温度差」が表れたのが、北朝鮮によるミサイル発射問題です。2019年5月9日の短距離弾道ミサイル発射について、安倍首相は「関連する国連安保理決議に違反するもので、極めて遺憾だ」と、国際法違反であると明確に非難しました。これに対し、トランプ大統領は「(金委員長は)注目を集めたいだけかもしれない」と述べ、重大な問題とは捉えない姿勢を示し、両国の認識の違いが露呈しました。
一方で、日本人拉致問題については足並みを揃えました。安倍首相が、拉致問題の一日も早い解決に向け「条件を付けずに金委員長と直接向き合う」との決意を述べると、トランプ大統領はこれを「全面的に支持する」と応じ、首相の「最優先課題」であることを理解していると支援を約束しています。
しかし、日米貿易交渉では再び立場の違いが表面化します。安倍首相はあくまで「2018年9月の日米共同声明を大前提とする」と、TPP(環太平洋経済連携協定)で合意した農産品関税の水準が上限であるという日本の立場を堅持しました。これに対し、トランプ大統領は「私たちはTPPと何の関係もなく、縛られていない」と、貿易赤字削減を優先する姿勢を強く打ち出し、認識の溝が鮮明になっています。
また、米中貿易摩擦について安倍首相は「対話を通じて建設的に問題解決を図ることを期待する」と述べたのに対し、トランプ大統領は「中国は合意したがっているが、私たちはその用意がない」と、関税圧力を緩めない強硬な姿勢を示しました。緊迫するイラン情勢では、安倍首相が「間違っても武力衝突に至ることがないように努力したい」と緊張緩和への意欲を見せ、トランプ大統領も「イランの体制転換を求めているわけではない」と応じるなど、日本の仲介努力に一定の理解も示されました。