「令和」初の「国賓」として来日したトランプ米大統領(当時)は、2019年5月27日までの滞在中、安倍晋三首相(当時)との「蜜月」関係を世界にアピールしました。ゴルフ、大相撲観戦、宮中晩さん会と手厚いおもてなしが続き、両首脳は「日米同盟はかつてなく盤石だ」と確認。日本側の狙いはひとまず達成されたかに見えました。
しかし、その親密な雰囲気とは裏腹に、2019年5月27日の首脳会談では激しい政治的駆け引きが交錯しました。会談冒頭、トランプ大統領は日米貿易交渉について「8月に発表をすることになるだろう」と突如言及。これに対し、安倍首相は一瞬けげんそうな表情を浮かべたといいます。
この「8月」発言の裏には、両首脳の「貸し借り」の思惑があります。トランプ大統領は2019年7月(当時未定)に行われる日本の参議院議員選挙に配慮し、交渉の本格化を「選挙の後まで待つ」とツイッターで発信していました。これは、選挙前に農業関税の譲歩が表面化するのを避けたい日本側への「貸し」を作った形です。
SNS上でも「選挙が終わったらすぐ無理難題が来るぞ」「この『貸し』は高くつきそうだ」と懸念されていた通り、トランプ大統領はその「借り」の返済を即座に迫りました。「8月」という異例の時期を挙げたのも、「参院選までは待つが、その後は待ったなしだ」という強い意志の表れと見られています。
両国の交渉には依然として大きな隔たりが残っています。農産品は「TPP(環太平洋経済連携協定)」で合意した水準を限度とすることで概ね一致していますが、日本が求める自動車の関税撤廃に米国は応じていません。さらに、日本車への追加関税や数量規制という最悪のシナリオを回避するメドも立っていないのが現状です。
トランプ大統領は会見で「私はTPPと何の関係もない」と明言し、あくまで米国の貿易赤字削減という「バランスシートの問題」として交渉に臨む姿勢を鮮明にしました。2020年の再選を目指し、支持層への成果にこだわる大統領に対し、安倍首相は党役員会で「そう簡単ではない」と交渉の長期化も示唆。「8月発表」を巡る日米の息詰まる駆け引きが始まっています。
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