2019年6月19日、東アジア地域を舞台とする巨大な経済連携協定、**RCEP(アールセップ:東アジア地域包括的経済連携)**の年内合意目標達成が、極めて難しい状況に見舞われています。タイのバンコクで同年6月20日から23日にかけて開催される東南アジア諸国連合(ASEAN:アセアン)首脳会議では、22日に経済相の特別会合を開き、日本・中国・韓国、そしてインドなど16カ国が参加するRCEPの妥結に向けて機運を高めたい考えでした。しかし、参加国の足並みは乱れており、特に中国がインドを枠組みから外した自由貿易協定(FTA)を提案したことで、交渉の先行きが一層不透明になっているのです。
RCEPとは、参加国の人口が世界の約5割、貿易額が約3割を占める、大型の経済連携協定を指します。経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)は、貿易や投資の障壁を下げることを目的としており、関税の撤廃・削減や、サービス、投資、知的財産などの幅広い分野でのルール作りを進めるものです。ASEANは、タイやインドネシア、インドなどで選挙が終了したこのタイミングを、交渉妥結の好機と捉えていました。このRCEPには、米国を除く11カ国が参加する環太平洋経済連携協定(TPP:ティーピーピー)に匹敵する、巨大な貿易圏を早期に実現したいという、ASEANが主導する強い意図が見て取れます。
私が編集者としてこの状況を注視している中で、最も衝撃的なのは、中国による「インド外し」の提案です。本年4月にラオスで開催されたASEANと日中韓の事務レベル会合において、中国側はASEANに日中韓を加えた13カ国での経済連携の枠組み、すなわち「東アジア経済コミュニティー(EAEC:イーエーイーシー)」の青写真を示した文書を提示しました。この文書には、EAECの主要協力分野として「FTAの構築を含む」と明記されており、これはRCEP参加国からインド、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国を除外して、新たなFTA締結を目指すという、非常に踏み込んだ内容です。この提案に対して、日本やASEANの一部からは、その場で強い反発の声が上がったと報じられています。
RCEP交渉停滞の核心と中国の狙いとは
中国がこのような強硬な姿勢に出た背景には、RCEP交渉の長期化に対する強い苛立ちがあると推測されます。RCEPの交渉は2013年に開始されましたが、特に大幅な関税撤廃に慎重な姿勢を崩さないインドと、それ以外の15カ国との間で、意見の隔たりが埋まらない状況が続いていました。また、日米が中国の台頭を意識して打ち出した「自由で開かれたインド太平洋構想」において、インドや豪州などが連携を深めていることへの牽制の思惑も透けて見えます。中国としては、この構想のキープレイヤーとなる国々を経済連携の枠組みから一時的に切り離すことで、自国主導の地域経済圏構築を目指したいのでしょう。
中国側は、本年5月に開票されたインド総選挙で、モディ首相が率いる与党が勝利したことを受け、第2次モディ政権が国内の反対勢力を抑え、RCEPの早期妥結に向けて前向きな姿勢に転じるのではないかと期待していた様子です。しかし、実際には自由化に慎重な姿勢で知られるゴヤル氏が商工相に就任したことで、その期待は早くもしぼみつつあります。ASEAN内でも、インドが高い自由化率の受け入れなどの妥協にすぐには応じないだろうという見方が広がっている状況です。RCEPの妥結には、インドの市場開放に対する強い警戒心をいかに和らげ、参加国全体で納得のいく着地点を見出せるかが鍵となるでしょう。
SNSでの反響と編集者としての見解
この中国による「インド外し」の提案は、SNS上でも大きな話題となっています。「RCEPの交渉がますます複雑になった」「中国の強引なやり方はどうかと思う」といった、交渉の難航や中国への懸念を示す意見が多く見受けられます。一方で、「インドの慎重姿勢も理解できる」という声もあり、各国間の利害対立の根深さを改めて認識させられました。この状況は、経済のグローバル化が進む現代において、いかに多くの国が自国の産業を守りながら国際的なルール作りに関わっていくことの難しさを象徴しています。
私はこのRCEP交渉の行方を、極めて重要なものだと考えています。なぜなら、RCEPが実現すれば、アジア太平洋地域の経済成長に多大な貢献をもたらし、日本の経済にも大きな恩恵をもたらすことが期待されるからです。日本としては、中国とインドという大国が参加する枠組みを維持しつつ、高いレベルでの自由化を目指すのが最善の策でしょう。そのためにも、ASEANの議長国であるタイを中心に、各国が粘り強く対話を継続し、妥協点を探っていくことが求められます。中国の提案は交渉をかく乱するものではありますが、各国が結束して建設的な議論を進め、年内妥結の道筋を再び見出して欲しいと強く願っています。
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