2019年5月27日、欧米自動車大手のFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)が、フランスのルノーに経営統合を提案したというニュースが世界を駆け巡りました。これは単なる企業の合併話ではなく、世界の自動車産業が「第3の大再編時代」へ本格的に突入したことを告げる号砲と言えるでしょう。SNS上でも「FCAとルノーが組んだら日産はどうなるんだ?」「ゴーン事件の裏でこんな巨大な話が進んでいたとは…」と、驚きと困惑の声が広がっています。
自動車産業は今、「100年に1度」の大変革期を迎えています。そのキーワードが「CASE(ケース)」です。これは「Connected(つながる車)」「Autonomous(自動運転)」「Shared(シェアリング)」「Electric(電動化)」の頭文字をとったもので、未来の車の姿を示しています。この大変革期において、従来の自動車メーカーのライバルは、もはや他の自動車メーカーだけではありません。
今回の統合提案の背景にあるのは、自動運転技術で先行するウェイモ(Google系)のような米国の「プラットフォーマー」(IT基盤を提供する巨大企業)や、電気自動車(EV)の心臓部である電池市場を握る中国のCATLなど、業界外の巨人たちへ主導権が移りつつあることへの強い焦りです。FCAとルノーが統合し、さらに日産・三菱自動車を含めたアライアンス全体となれば、その年間販売台数は1500万台を超えます。この圧倒的な規模を背景に、業界外の強力なプレーヤーとの交渉のテーブルで主導権を握ることが、最大の狙いでしょう。
過去、自動車業界には2度の大再編期がありました。1998年のダイムラー・ベンツとクライスラーの合併に端を発する第1次再編。そして、2008年の「リーマン・ショック」(世界金融危機)によるGMやクライスラーの経営破綻が引き起こした第2次再編です。しかし、これらはいずれも、自動車産業の「枠組みの中」で生産規模を拡大し、コスト削減を追求するものでした。今回の第3次再編は、産業の主導権そのものを賭けた、全く次元の異なる戦いなのです。
FCAは、経営破綻したクライスラーを見事に再建した歴史を持つ一方、北米の大型車が収益源であり、「電動化」への対応が大きな課題でした。そこで、EV技術に強みを持つルノー・日産連合に狙いを定めたのです。カルロス・ゴーン被告の逮捕後、ルノーと日産の経営が混乱しているこの状況は、FCAにとってまさに「絶好のタイミング」となった形です。日米欧をまたぐ史上初の巨大自動車連合が誕生しようとする中、次の100年を見据えた各社トップの経営ビジョンが今、厳しく問われています。
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