自動車業界が「100年に一度の変革期」を迎える中、欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)が、フランスのルノーに対して経営統合を提案し、ルノー側も「前向きに検討する」と応じました。もしこの統合が実現すれば、ルノーと既に提携関係にある日産自動車、三菱自動車を加えた新グループの年間販売台数は、1,500万台を超えることになり、世界最大の自動車グループが誕生する見通しです。
この巨大再編の背後にあるのは、電動化(Connected)、自動運転(Autonomous)、シェアリング(Shared)、電動化(Electric)といった**「CASE(ケース)」と呼ばれる一連の新技術への膨大な投資負担です。これらの新技術を主導するのは、米ウェイモのようなデジタル系の新興企業が多く、従来の自動車メーカーは脇役に甘んじる可能性があるという強い危機感があります。FCAがルノーとの統合を目指すのは、まさに規模を拡大し、部品調達コストや新技術の開発投資負担を減らすことで、この変革期を乗り切るための効率的な事業体制を整えるためだと言えるでしょう。
また、足元の環境規制も再編を後押ししています。2021年以降、欧州連合(EU)の燃費規制が順次厳しくなりますが、多くのメーカーがそれを達成する目処が立っていません。電気自動車(EV)だけでは足りず、日本勢が先行するハイブリッド車(HV)の拡充が不可欠だという見方も多い状況です。FCA傘下の米クライスラーは、燃費の良くない大型車が主力という事情があり、ルノーのパートナーである日産や三菱自が持つ環境関連技術は、FCAにとって極めて魅力的なものとなるはずです。
さらに、地理的な補完性も大きなメリットです。FCAの事業基盤は米州と欧州に偏っていますが、ルノー・日産連合と一緒になることで、成長市場である中国や東南アジアといった地域に一気に布石を打つことが可能になります。SNS上では、「生き残りのための巨大化は当然の流れ」「技術と市場の補完性が完璧だ」といった、統合効果への期待を表明する声が多く見受けられます。
しかしながら、この巨大再編には、無視できない副作用や課題も存在します。FCAの提案は、両社の株主が統合新会社の株式を50%ずつ握る対等の関係を前提としていますが、過去の自動車再編で頻繁に起きたような主導権争いが生じるリスクがあります。また、会社の巨大化によって組織が硬直化し、意思決定が遅れることで、かえって競争力が劣化するという懸念も指摘されています。
そして、最大の課題は、この新グループの「中核的な強み」がどこにあるのか、外からはまだ明確に見えないという点でしょう。トヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)といったライバルと比較して、技術力やブランド力で明確な優位性を打ち出せるのかが問われます。
最も複雑な運命に立たされているのが、ルノーの提携相手である日産自動車です。統合が実現した暁には、日産の立ち位置は極めて難しくなるでしょう。「株式を持ち合いながらも経営の独立性は維持」という現状を続けるのか、あるいはルノーとの経営統合に踏み込むのか、日産は早晩、重大な判断を迫られることになります。私自身の意見としましては、このFCA・ルノーの統合は、自動車産業が生き残りをかけて進む「規模と効率の追求」という流れを決定づけるものですが、日産にとっては、自社の利益を最大限に守るための「戦略的な再独立」**を模索する、最後の機会となるべきだと考えます。
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