2019年11月10日、東京五輪のテスト大会を兼ねた卓球のワールドカップ団体戦は、女子決勝で日本と中国が激突しました。結果は惜しくも敗れ、中国に9連覇を許す形となりましたが、そこにはスコア以上の壮絶なドラマが隠されています。特にエースの伊藤美誠選手が挑んだ第2試合は、会場全体が息を呑むような大接戦となりました。
伊藤選手は、直近の対戦成績でも中国選手と互角以上に渡り合っている孫穎莎(スン・インシャ)選手と対峙しました。得意とする予測不能な「変化サーブ」を武器に、序盤から果敢に攻め立てる姿が印象的です。サーブの回転量や出す場所を瞬時に変える戦術が冴え渡り、瞬く間に2ゲームを先取した展開には、日本中のファンが金メダルへの期待を膨らませたことでしょう。
試合は最終第5ゲームにもつれ込む大熱戦となり、伊藤選手は10対7というマッチポイントを握ります。しかし、勝利まであと1点という場面で、魔物が潜んでいました。「早く決めたい」という焦りからか、本来の冷静さを欠いたミスが重なってしまったのです。一方の孫選手は、窮地で驚異的な集中力を発揮し、鮮やかなレシーブエースを叩き込みました。
結局、5連続失点という衝撃的な逆転負けを喫した伊藤選手は、試合後に「1点を取りに行く際の戦術や、思い切りの良さで一歩及ばなかった」と声を落としました。SNS上では「これぞ世界最高峰の戦い」「美誠ちゃんなら次は勝てる!」といった熱い声援が飛び交う一方で、中国トップ選手の勝負どころでの精神力の強さに驚嘆する声も多く見受けられます。
東京五輪の舞台で見えた「自国開催」という名の巨大なプレッシャー
今回の決勝戦が行われたのは、2020年の東京五輪でも使用される予定の東京体育館です。本番さながらの大歓声が響き渡る中、平野美宇選手は「普段のワールドツアーとは比較にならないほどの重圧を感じた」と率直な胸の内を明かしました。ダブルスでも10点を先取しながら逆転を許す場面があり、大舞台特有の「勝ち急ぎ」が日本チーム全体の課題として浮き彫りになっています。
石川佳純選手は、主将としてこの厳しい現実を正面から受け止めています。「自国開催という特別なプレッシャーを、自分たちのパワーに変えていけるように心身ともに鍛え直したい」と、2020年を見据えた強い決意を語りました。技術的には中国と肉薄しているからこそ、最後の一枚の壁となっているのは、極限状態での「頭の回転」と「精神の静寂」なのかもしれません。
編集者の視点から言わせていただければ、この敗北は決して悲観すべきものではありません。あと1点で勝利という地点まで王者を追い詰めた事実は、日本女子の地力が確実に世界一に近づいている証拠です。最強のライバルである中国を相手に、これほどまでの「悔しさ」を東京五輪の半年前という絶好のタイミングで味わえたことは、最大の収穫と言えるのではないでしょうか。
「あと1点」の重みを知った彼女たちが、これからどのように化けるのか目が離せません。今回の銀メダルは、金メダルを掴み取るための最高のプロローグになるはずです。逆境を糧に進化を続ける「黄金世代」の3人が、来たる2020年の夏、満員の観衆の前でリベンジを果たす瞬間を、私たちは信じて待ちたいと思います。
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