フィギュアスケートのグランプリシリーズ第3戦、フランス杯が2019年11月2日に閉幕しました。日本中が注目した宇野昌磨選手の結果は、合計215.84点で8位。しかし、数字以上に私たちの胸を打ったのは、演技後に彼が流した一筋の涙でした。
選手が採点を待つ「キス・アンド・クライ」という場所をご存知でしょうか。ここは本来、コーチと選手が喜びや悔しさを分かち合う神聖な空間です。しかし、この日の宇野選手の隣に師の姿はありませんでした。たった一人で座る彼の姿は、会場の切なさを誘いました。
「もし温かな歓声がなければ、泣くことはなかったでしょう」と彼は語りました。言葉にできない感情が溢れ出した理由は、どん底の状況でも自分を支えてくれた観客への感謝だったのです。コーチ不在という異例の体制で挑んだ今季、その苦悩が限界に達していたのかもしれません。
技術的な狂いと闘い抜いた不屈の精神
ショートプログラムで4位と出遅れた宇野選手は、2019年11月2日のフリーでも本来の精彩を欠いていました。今季初投入の4回転サルコーは、空中で規定の回転数に足りない「回転不足」となり、着氷時にバランスを大きく崩してしまいます。
さらに、彼の代名詞とも言えるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)でも、回転の軸が傾いて転倒が続出しました。体力的にも精神的にも限界に近い中、肩で息をしながら最後まで滑りきる姿に、SNS上では「見ていて涙が止まらない」「昌磨なら絶対に復活できる」と応援の声が殺到しています。
長年師事したコーチの元を離れ、現在は特定の指導者がいない「独り立ち」の状態です。この孤独な戦いについて、本人は「一緒に歩んでくれる存在の必要性を感じている」と率直な胸の内を明かしました。これは、彼がさらなる高みを目指すための、避けて通れない成長痛なのでしょう。
私は、今回の涙を「敗北」ではなく「覚醒」への一歩だと捉えています。完璧な演技だけが感動を呼ぶわけではありません。弱さを認め、ボロボロになりながらもリンクに立ち続けた彼の誠実さこそ、編集者として広く伝えたいアスリートの真髄です。
宇野選手は次戦のロシア杯に向け、スイスでステファン・ランビエル氏の指導を仰ぐ予定です。このフランスでの悔しさが、銀盤に再び輝くためのエネルギーに変わることを信じて止みません。2019年11月4日、彼はまた新しい物語を歩み始めました。
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