スポーツの祭典、東京オリンピック・パラリンピックがいよいよ来年に迫る中、2019年10月17日に開催された「第3回チャレンジニッポン」では、最前線のテクノロジーが拓く未来について熱い討論が交わされました。パネリストには、北京五輪競泳メダリストの宮下純一氏をはじめ、データ分析やウェア開発のプロフェッショナルたちが集結しました。
現在、注目を集めているのが「コンディションの可視化」です。ユーフォリアの橋口寛代表が提供する「ONE TAP SPORTS」は、選手の体調や練習量を数値化するツールで、多くの日本代表チームに導入されています。練習不足ではパフォーマンスが上がらず、やりすぎれば怪我のリスクが高まるという、スポーツ界永遠の矛盾にデータで挑んでいるのです。
元日本代表の宮下氏は、自身の現役時代を振り返り「当時、こうした客観的なデータがあれば、成長の喜びや反省の仕方が劇的に変わっていたはずだ」と語りました。SNS上でも「感覚派だった選手がデータを受け入れることで、さらなる高みを目指せる時代になった」と、テクノロジーと人間の融合に期待を寄せる声が多数上がっています。
映像と水着に宿る日本の技術力
技術の進化は、観戦体験や装備にも及んでいます。Qonceptの林建一社長は、カメラ映像から選手やボールの動きをリアルタイムで解析し、CGを合成する「トラッキング技術」を紹介しました。これは映像内の対象物を追跡し、位置座標を取得する技術です。これにより、これまでの「常識」を覆すような新事実がデータから発見され始めています。
また、デサントの秋田祐作氏は、瀬戸大也選手と共同開発した革新的な水着について明かしました。リオ五輪直後から開発をスタートさせ、従来比で約20%もの軽量化に成功したといいます。五輪本番の1年前から選手に着用してもらい、フォームを邪魔しない究極のフィット感を追求する姿勢は、まさに職人技とハイテクの結晶と言えるでしょう。
スポーツを愛する一編集者として、私はこの「パーソナライズ化」の流れを強く支持します。かつての「レーザー・レーサー」騒動のように、選手が道具に合わせる時代は終わり、今は道具が選手に寄り添う時代です。自分に最適な選択肢を見極める力が、現代のアスリートには何より求められているのではないでしょうか。
スポーツの知見を社会のレガシーへ
議論の最後には、これらの技術がトップアスリートだけのものではないという展望が語られました。林氏は、誰もが持つスマートフォンでプロ級のデータが取れる世界の実現を目指しています。これが叶えば、アマチュア層の競技レベルの底上げはもちろん、スポーツをより身近に、より科学的に楽しむ文化が日本中に根付くはずです。
橋口氏は、スポーツ分野で培われた知見が「高齢者の寝たきり予防」といった社会課題の解決に直結すると指摘しました。限界に挑む選手のケア技術は、そのまま一般人の健康寿命を延ばすヒントになります。東京2020大会を契機に加速した技術開発が、私たちの生活を豊かにする「レガシー(遺産)」となる日は、すぐそこまで来ています。
コメント