世界情勢が不透明なとき、かつての日本円は「安全資産」として真っ先に買われる存在でした。しかし、2019年10月24日現在の為替市場を見渡すと、以前のような急激な円高の波は影を潜めているようです。海外には依然として多くのリスクが渦巻いているにもかかわらず、なぜ円の独歩高が起きないのでしょうか。その裏側には、需給バランスを円安方向へと押し戻す、強力な二つの要因が潜んでいます。
まず注目すべきは、日本の生命保険会社や年金基金といった「機関投資家」たちの動きです。彼らは国内の超低金利に見切りをつけ、より高い利回りを求めて海外の債券、いわゆる「外債」への投資を加速させています。外債投資とは、日本円を売って米ドルなどの外貨に替え、外国の政府や企業にお金を貸し出す行為を指します。この「円を売る」という膨大な実需が、円高を食い止める防波堤のような役割を果たしているのでしょう。
SNS上では「これだけ世界が荒れているのに、なぜ為替が動かないのか」と不思議がる声も目立ちます。投資家たちの間でも、教科書通りの円高シナリオが通用しなくなった現状に、戸惑いの色が隠せません。しかし、実体経済に目を向けると、もう一つの構造的な変化が見えてきます。それが、中国を中心とした世界的な景気減速の影響をまともに受けている、日本の「貿易赤字」という現実です。
貿易赤字とは、日本が海外から輸入する金額が、輸出する金額を上回る状態を言います。製品を海外へ売って外貨を稼ぎ、それを円に戻す「円買い」の力が弱まる一方で、輸入代金を支払うための「円売り」が増えているのです。特に中国経済の足踏みは日本の輸出産業に影を落としており、2019年10月24日時点の状況を鑑みれば、この貿易収支の悪化は、円高を阻む決定的な重石となっていると推測されます。
編集者の視点から言えば、今の円相場は「安全神話」という感情的な動きよりも、冷徹な資金の流れという「需給の現実」が支配しているように感じられます。リスクオフの円買いが起きても、それ以上に日本から外へと流れ出す資本の力が強いのです。今後は単なるニュースのヘッドラインだけでなく、こうした資金の蛇口がどこを向いているのかを注視することが、為替の先行きを読み解く鍵となるに違いありません。
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