東京証券取引所は2019年11月5日、株式売買システム「アローヘッド」のアップデートを約4年ぶりに実施しました。今回の更新は単なる速度向上に留まらず、近年の市場環境に合わせた画期的な制度変更を伴うものです。ネット上の投資家界隈では「予期せぬ急落が防げる」と期待する声がある一方で、「大引けのボラティリティ(価格変動性)が高まるのではないか」という警戒感も広がっています。
注目すべき変更点の一つは、株価が急激に動いた際の「値動き抑制策」の強化でしょう。これまでは株価が短時間に激しく上下した場合、一時的に取引を制限する仕組みがありました。しかし、十分な注文があれば制限を超えて取引できる「例外規定」が存在していたのです。2019年11月5日からはこの例外が廃止され、急変時には必ず1分間の制限が適用されることになりました。
この背景には、0.001秒単位で売買を繰り返す「HFT(高速取引)」の台頭があります。過去にはHFTの影響で、わずか数秒の間に株価が20%以上も乱高下し、その後すぐに元の価格へ戻るという「フラッシュ・クラッシュ」のような事態が散発していました。こうしたアルゴリズムによる瞬間的な混乱を物理的にシャットアウトすることで、一般の投資家がパニックに巻き込まれるリスクを軽減する狙いがあるのです。
取引終了時のルール変更が個人投資家に与えるインパクト
もう一つの大きな柱は、午後3時の取引終了時(大引け)における値幅制限の拡大です。これまで終値を決める際の値幅は直前株価の1.5〜3%程度に設定されていましたが、本日から3〜6%へと倍増されました。これは日経平均株価などの指数に連動させる「パッシブ運用」の資産規模が、この5年で約2倍の70兆円規模まで膨れ上がったことに対応した措置と言えます。
パッシブ運用のファンドマネージャーは、指標とのズレをなくすために取引終了直前に巨額の注文を出す傾向があります。従来の値幅では注文がさばききれず、取引が不成立になる懸念がありました。今回の緩和によって、海外の主要取引所並みの柔軟性が確保されることになります。市場の流動性を維持するためには、避けては通れないアップデートだったと私は評価しています。
ただし、個人投資家の皆様は「大引けの跳ね」にこれまで以上に注意を払う必要があるでしょう。例えば株価が7,500円前後の銘柄であれば、わずか一瞬で300円も価格が上下する可能性を秘めているからです。システムが高速化し、制度が合理的になる一方で、一瞬の判断が収益を大きく左右するシビアな市場へと進化しています。2019年11月5日は、日本の株式市場が新たなステージへ踏み出した記念すべき一日と言えそうです。
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