日本プロ野球史において、今後誰も到達できないであろう前人未到の400勝という記録を打ち立てた金田正一さんが、2019年10月6日に惜しまれつつもこの世を去りました。巨人の名遊撃手として活躍した黒江透修さんは、入団1年目だった1964年に初めて対峙した際の衝撃を、今でも鮮明に記憶しているそうです。当時、国鉄スワローズ(現在の東京ヤクルトスワローズ)のエースとして君臨していた金田さんの投球は、まさに異次元の領域にありました。
特に打者を恐怖に陥れたのが、見る者の目には「天井から急降下してくる」とまで形容された、落差の極めて大きいカーブです。かつてのミスタープロ野球・長嶋茂雄さんですら、攻略するためには「上から叩き切るような大根切りでなければ打てない」と周囲に漏らすほど、その変化は強烈なものでした。実際に黒江さんは、想像を絶するキレを前にバットを振ることすらできず、見逃し三振に倒れたというエピソードが残っています。
驚くべきことに、1964年の金田さんはプロ入り15年目というベテランの域に達していながら、14年連続となるシーズン20勝という驚異的な記録をまさに達成しようとしていました。長きにわたり左腕のエースとしてマウンドを守り続け、衰えを知らないその姿は、当時の野球ファンや選手たちにとって絶対的な象徴だったに違いありません。ネット上でも「この記録は現代の分業制野球では絶対に不可能」「まさに不世出の怪物だった」と、その偉業を称える声が絶えません。
筆者の視点から申し上げれば、金田さんの凄みは単なる数字の多さだけではなく、打者の心理を支配する圧倒的な威圧感にあったのだと感じます。現代のようにデータ分析が普及していない時代、自らの左腕一本で打者をねじ伏せるその姿勢は、スポーツの本質的な熱狂を体現していました。400勝という数字に秘められた、勝利への飽くなき執念と徹底した自己管理の精神は、時代が移り変わっても色あせることのないプロフェッショナリズムの極致と言えるでしょう。
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