2019年に入り、日本列島を相次いで襲った記録的な台風は、神奈川県川崎市の経済にも深い爪痕を残しています。川崎市が2019年10月31日に発表した推計によると、2019年9月に発生した台風15号および同年10月の台風19号による市内中小企業等の被害総額は、2019年10月29日時点の集計で約57億円に達することが明らかになりました。報告された被害件数は324件にのぼり、地域経済を支える多くの事業者が苦境に立たされています。
特に深刻な状況にあるのが、ものづくりの街・川崎を象徴する製造業です。業種別の内訳を詳しく見ていくと、製造業の被害額は約49億円(101件)と、全体の約8割以上を占める突出した数字となりました。一方で農業の被害は約900万円(45件)、サービス業などその他の業種では約8億円(178件)と推計されています。大規模な浸水被害などが、工場の精密機械や設備に致命的なダメージを与えたことが、この巨額な被害額の背景にあると考えられます。
地域一丸となって取り組む被災事業者への手厚い金融支援
こうした未曾有の事態を受け、川崎市は被災した事業者に対してスピード感のある支援策を打ち出しました。具体的には、災害対策資金の融資を利用する際、本来事業者が負担すべき「信用保証料」を市が全額肩代わりする制度を新設しています。信用保証料とは、公的な保証機関が融資の保証人となるために支払う手数料のことですが、このコストをゼロにすることで、資金繰りに苦しむ経営者の負担を少しでも軽減しようという市の強い意志が感じられます。
行政だけでなく、地元の支援機関や金融機関も総力を挙げてバックアップ体制を敷いています。川崎商工会議所や川崎市産業振興財団は、経営上の悩みに応える特別相談窓口を速やかに設置しました。また、地域に根差した川崎信用金庫では全店舗で緊急相談窓口を開設し、復興に向けた専用ローンの取り扱いをスタートさせています。さらに横浜銀行も各店舗で融資相談に応じており、官民一体となった「チーム川崎」での復旧支援が急ピッチで進んでいます。
SNS上では「地元の工場が浸水して片付けに追われている」「これほど大きな被害が出ているとは驚いた」といった悲痛な声が上がる一方、「支援窓口の情報が早く届いてほしい」と切実な支援を求める投稿も散見されます。筆者の私見ですが、今回の被害は単なる一企業の損失に留まらず、日本のサプライチェーン全体に影響を及ぼしかねない重大な事態です。こうした有事にこそ、金融機関が形式的な審査に囚われず、事業者の未来に寄り添う柔軟な対応を継続することを切に願って止みません。
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