2019年11月28日、東京の臨海部が大きな転換点を迎えています。東京都の官民連携チームが10月下旬に公表したアイデアの中に、波紋を広げる計画が含まれていました。それが江東区の青海エリアにおける「MICE」および「IR(統合型リゾート)」の整備案です。MICEとは、国際会議や展示会といったビジネスイベントの総称で、これにカジノを含むリゾート施設を組み合わせることで、地域の競争力を一気に高めようという野心的な試みなのです。
かつて石原慎太郎元知事も夢見た臨海部へのカジノ誘致ですが、現在の小池百合子知事も「メリットとデメリットの両面がある」と慎重な姿勢を崩していません。SNSでは「東京の景色がガラリと変わる」「経済が回るなら賛成」という期待の声がある一方で、「依存症が心配」「お台場周辺の雰囲気が壊れる」といった懸念も噴出しています。2020年以降の指針となる「東京ベイエリアビジョン」において、この構想が目玉となるのは間違いありません。
知事選を控えた政治的駆け引きと策定延期の裏側
都は当初、このビジョンを2019年末までに取りまとめる予定でした。しかし、官民チームの案が出た同日、策定時期を2020年9月以降に延期することを発表しました。表向きの理由は都政の長期戦略と歩調を合わせるためとされていますが、2020年7月5日に投開票を控えた都知事選への影響を考慮したとの見方が有力です。議論を呼ぶIR構想を公表して、選挙戦の火種にするのを避けたいという思惑が透けて見えます。
都が委託した報告書によれば、IRが実現した場合の経済波及効果は、年間で実に7000億円から9000億円にのぼると試算されています。税収も年間800億円が見込まれ、日本経済を牽引する強力な「起爆剤」としての期待は非常に高いものです。しかし、ギャンブル依存症対策や治安維持といった課題は依然として大きく、政治の世界では「知事選まではIRの話題はタブー」とされるほど、非常にデリケートな問題として扱われています。
残された時間はわずか!伝統の非ギャンブル路線との決別か
政府は2019年11月19日、IRの区域整備計画の申請を2021年1月から受け付ける方針を示しました。締め切りとなる2021年7月末まで、残された期間は1年8カ月しかありません。地元の調整や事業者選定を考えると、時間は極めて限定的です。私は、経済効果という「実利」を取るか、美濃部亮吉元知事時代から続く「健全な公営競技の抑制」という「伝統」を守るか、都は究極の選択を迫られているのだと感じます。
インバウンド需要を取り込み、東京を世界一の観光都市にするためには、青海エリアの再開発は絶好のチャンスです。しかし、都民の理解を得られないまま突き進めば、大きな分断を招きかねません。小池知事がどのようなリーダーシップを発揮し、この巨大なジグソーパズルを完成させるのか。2020年の東京オリンピック・パラリンピック後に示される結論は、私たちのライフスタイルや東京という街のあり方を、根本から変えてしまう可能性を秘めています。
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