北海道のほぼ中央に位置し、大雪山の雄大な自然に抱かれた「写真の町」として知られる東川町が、新たな一歩を踏み出しました。2019年11月29日、同町は東海大学との間で包括連携協定を締結し、地域活性化と人材育成に向けた強力なパートナーシップを築くことで合意したのです。
調印式は東川町内で行われ、松岡市郎町長と東海大学の山田清志学長が、これからの未来を見据えた固い握手を交わしました。今回の提携は、単なる自治体と大学の協力関係に留まらず、芸術やデザインというクリエイティブな分野を軸に据えている点が非常にユニークで、SNS上でも「これからの地方創生のモデルケースになりそう」といった期待の声が寄せられています。
世界に羽ばたくクリエイターを育む「織田コレクション」の縁
この連携の鍵を握るのが、東海大学の名誉教授であり、世界的な椅子研究家としても著名な織田憲嗣氏の存在です。織田氏は東川町の文化芸術コーディネーターも務めており、氏が長年収集してきた膨大な北欧デザインの名作群、通称「織田コレクション」が、この二者を結びつける強力な磁石となりました。
「包括連携協定」とは、特定の目的だけでなく、教育、産業、文化、まちづくりなど幅広い分野で互いの資源を活用し合う約束のことです。今回の協定により、東海大学の芸術学部やデザイン系の学生たちが、実際に東川町に滞在して地場産業である家具製作に触れたり、豊かな自然の中で感性を磨いたりする実地教育の機会が飛躍的に増えることでしょう。
東川町が国内の大学とこうした協定を結ぶのは今回が初めての試みであり、松岡町長は「家具やデザインの分野で、本場である欧州を凌駕するような人材をこの地から輩出したい」と熱い意欲を語りました。単なる地方移住の推進に留まらず、世界基準の職人やアーティストを育てようとする町の姿勢には、編集部としても強い共感を覚えます。
「人生の質」を問い直す、豊かなキャンパスとしての東川町
一方で、山田学長は「学生たちには、この恵まれた自然を全身で体感しながら、クオリティ・オブ・ライフ(人生の質)とは何かを学んでほしい」と期待を寄せています。都市部では味わえない四季折々の表情や、東川町独自の文化に触れることは、教科書では学べない生きた知恵となるに違いありません。
東川町は「ひがしかわ株主制度」など、ユニークな政策で全国から注目を集めている自治体です。そこに東海大学という教育のプロフェッショナルが加わることで、町全体がひとつの大きなキャンパスへと進化していく予感がします。伝統的な家具職人の技術と若者の瑞々しい感性が融合したとき、一体どのような新しいプロダクトが生まれるのか、今から楽しみでなりません。
これからの時代、地方に必要なのは「モノ」を消費する場所ではなく、新たな価値を「創造」する場所であると言えます。デザインという視点から、町と大学が手を取り合って挑むこのプロジェクトは、日本の地方が抱える過疎化や産業の衰退という課題に対する、ひとつの鮮やかな正解を示してくれるのではないでしょうか。
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