2019年11月12日、台湾の北西部に位置する苗栗県の沖合で、再生可能エネルギーの歴史に刻まれる重要な一歩が記されました。東京電力ホールディングスと中部電力が共同出資するJERA(ジェラ)が、台湾初となる洋上風力発電所「フォルモサ1」の完工式を華やかに執り行ったのです。SNS上では「ついに日本勢がアジアの再エネ市場で本気を見せた」「1兆円規模の投資額に驚きを隠せない」といった期待の声が次々と上がっており、エネルギー業界の新たなうねりを感じさせます。
今回竣工したフォルモサ1は、出力13万キロワットを誇り、2019年末までに商業運転を開始する予定です。特筆すべきは、世界最大手のデンマーク企業アーステッドが35%、そして日本のJERAが32.5%という高い比率で出資している点でしょう。洋上風力発電とは、海上に巨大な風車を設置してその風の力で電気を作る仕組みですが、陸上よりも強い風が安定して吹くため、より効率的な発電が期待できる次世代の切り札なのです。
世界最大級!1兆円プロジェクトが描く圧倒的なスケール
JERAの野心は「フォルモサ1」に留まりません。2021年の稼働を目指す「フォルモサ2」に加え、さらには出力200万キロワットという、単一の洋上風力としては世界最大規模となる「フォルモサ3」への参画も決定しました。この巨大プロジェクトの総事業費は、なんと1兆円に達する見込みです。2026年から2030年の運転開始を目指すこの計画において、JERAは4割程度の出資を調整しており、実現すればまさに世界の再エネ地図を塗り替えることになります。
一連の投資によってJERAが手にする発電容量は、台湾だけで約100万キロワットに達します。これは一般的な原子力発電所1基分に相当する膨大なエネルギーです。これまで欧州がリードしてきた洋上風力市場ですが、経済成長が著しく、かつ温暖化対策として石炭火力からの脱却を急ぐアジアへと、その主戦場は確実に移っています。台湾の蔡英文政権も、2025年までに総発電容量の7%を洋上風力で賄うという野心的な目標を掲げ、アジアの供給拠点化を狙っています。
なぜ今、海なのか?JERAが賭ける「火力からの脱却」という未来
JERAがこれほどまでに台湾へ注力する背景には、切実な生き残り戦略があります。2015年に設立され、2019年4月に両親会社の火力事業を完全に引き継いだ同社は、国内火力の約半分を担う巨大企業です。しかし、世界的な低炭素化の流れにより、二酸化炭素を多く排出する石炭火力への風当たりは強まる一方です。国内市場も人口減少で縮小が見込まれる中、「現状のビジネスモデルのままでは立ち行かない」という危機感が、同社を再エネへと突き動かしているのでしょう。
私は、今回のJERAの挑戦を高く評価します。単に投資するだけでなく、台湾という先行市場で世界トップクラスのアーステッド社から最新のノウハウを吸収しようとする姿勢は、非常に合理的です。ここで培った経験は、今後日本国内の秋田県沖などで本格化する洋上風力開発において、極めて強力な武器になるはずです。日本企業が培ってきた「現場力」と、世界の「最先端技術」が融合する瞬間を、私たちは目撃しているのかもしれません。
2025年度までに再エネの発電容量を500万キロワットまで一気に引き上げるというJERAの目標。その達成の鍵を握るのが、この台湾の荒波の中で回る巨大な風車たちです。2019年11月12日に小野田聡社長が語った「この地で学び、日本へ展開したい」という言葉は、日本のエネルギー政策が新たな局面に入ったことを象徴しています。アジアの海が、これからのクリーンエネルギーを支える最大の電源地帯へと姿を変えていく様子に、今後も目が離せません。
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