日本のスポーツ観戦スタイルが、今まさに劇的な変貌を遂げようとしています。これまでスタジアムといえば「熱狂的なファンが声を枯らして応援する場所」というイメージが一般的でした。しかし、昨今のビジネス界ではスポーツ観戦を「大切な顧客をもてなす接待の場」として活用する動きが急速に広がっています。全国各地のスタジアムでは、この新たな需要を確実に取り込むため、これまでにない大規模な改修や新設プロジェクトが次々と動き出しているのです。
なかでも注目を集めているのが、2015年に開業したJリーグ・ガンバ大阪の本拠地「パナソニックスタジアム吹田」の取り組みでしょう。大阪府吹田市に位置するこのスタジアムでは、現在「いかにしてVIPエリアの席数を増やすか」という課題に全力で取り組んでいます。これまでは立食形式のカジュアルな空間が中心でしたが、着席スタイルの座席を増設することで、高級感溢れるコース料理の提供が可能になり、客単価の大幅な向上を見込めるという戦略です。
メインスタンド中央にあるラウンジでは、初年度の80席から現在は200席近くまで拡大されました。さらに2020年度に向けては、これまで立食スペースだったエリアを改装し、新たに70席ほどを設ける計画が進んでいます。一方で、課題として挙げられるのがバックスタンド側の法人向けルームの稼働率です。メイン側の個室がほぼ完売状態であるのに対し、バック側はまだ空きが目立つため、今後は未利用エリアの有効活用が鍵を握ることになるでしょう。
SNS上では、こうしたスタジアムの高級化路線に対して「海外のような贅沢な観戦環境が増えるのは嬉しい」といった歓迎の声が上がる一方で、「一般席の熱気とVIP層の静寂が共存できるのか」といった興味深い議論も巻き起こっています。単なる座席の提供に留まらず、そこでしか味わえない特別な体験価値をいかに演出するかが、今後のスポーツビジネスにおける勝敗を分けるポイントになると私は確信しています。
長崎に誕生する「泊まれるスタジアム」と地方の法人需要
既存施設の改修だけでなく、全く新しい発想でスタジアムの価値を再定義する動きも加速しています。長崎県佐世保市に拠点を置く通販大手ジャパネットホールディングスは、長崎市内にV・ファーレン長崎の新たな本拠地を建設する壮大な計画を発表しました。この新スタジアムの目玉は、単なるVIPルームの設置に留まらず、なんと客室の窓から直接フィールドを眺めることができる「スタジアムホテル」を併設する点にあります。
スタジアム経営が持続可能なものとなるためには、接待を検討するビジネス層の裾野を広げることが不可欠です。2019年9月20日に開催されたラグビーワールドカップの開幕戦では、まさに理想的な接待の光景が見られました。大手損保会社の支社長と取引先のスタートアップ企業社長が、互いに代表ジャージーを身にまとい、弁当を楽しみながら試合を見守る。仕事の話をせずとも、トライの瞬間にハイタッチを交わすことで心の距離を縮める様子は、スポーツが持つ独自の力を象徴しています。
こうした「一生に一度」の体験を求める声は、大企業だけでなく地方の中小企業の間でも確実に高まっています。スポーツ観戦をフックにした地域経済の活性化は、まさにこれからの時代のスタンダードになるはずです。スタジアムは今、単なる競技場から、地域の誇りとビジネスチャンスが交差する「総合エンターテインメント施設」へと進化を遂げようとしています。
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