2019年11月19日の朝、和歌山市内を歩いていた無辜の市民の命が、空から降り注いだ凶器によって奪われるという痛ましい事故が発生しました。12階建てビルの屋上で進められていた看板設置用の足場解体作業中に、重さ約5キロもの鉄パイプが地上へ落下したのです。運悪くその場を通りかかった26歳の銀行員、板垣智之さんが直撃を受け、帰らぬ人となってしまいました。
この事態を重く見た和歌山県警は、2019年11月20日、業務上過失致死の疑いで工事に関わった建設会社2社の家宅捜索に踏み切りました。捜索の対象となったのは、工事を元請けとして統括していた「SIGN TAKASE」と、実際に現場で作業を担っていた下請け業者の「ヒロケン」です。警察は、作業現場の安全管理体制に重大な不備がなかったかを厳しく追及する方針を固めています。
繰り返された落下トラブルと問われる安全管理
驚くべきことに、この現場では致命的な事故が起こるわずか4日前の2019年11月15日にも、鉄パイプが落下するトラブルが起きていたことが判明しました。この時は作業を一時中断したものの、会社側は安全が確保できたと判断し、2019年11月18日に作業を再開したばかりだったといいます。「業務上過失致死」とは、職業上の注意義務を怠り、結果として人を死なせてしまう罪を指しますが、事前の警告とも言える事象を軽視した代償はあまりに大きすぎました。
下請け業者であるヒロケンの社長は、遺族への謝罪の言葉を述べるとともに、防護ネットなどの安全対策は講じていたと説明しています。しかし、実際に通行人が犠牲になっている以上、その対策が形骸化していた疑いは拭えません。ネット上では「二度も同じミスを繰り返すのは人災だ」「忙しさを優先して命を軽視していないか」といった、企業の安全意識の欠如を厳しく批判する声が相次いでおり、建設業界全体への不信感も高まっています。
編集者としての視点から述べれば、今回の事故は「防げたはずの悲劇」であった可能性が極めて高いと言わざるを得ません。15日のトラブル時点で、なぜ地上への落下を完璧に防ぐ物理的な遮断措置が徹底されなかったのでしょうか。工事現場における安全確認は、単なるマニュアルの遵守ではなく、そこに生きる人々の命を預かる重い責任を伴うものです。捜査を通じて、現場の「慢心」がどこにあったのかを明確にし、再発防止への教訓とする必要があります。
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