日本のビール業界を牽引するキリンホールディングスが、世界最大のクラフトビール市場であるアメリカで大きな勝負に出ました。同社は2019年11月20日、全米第3位の規模を誇るクラフトビールメーカー、ニュー・ベルジャン・ブルーイングを買収することを正式に発表したのです。2020年3月末までに株式を100%取得する計画で、これによりキリンの海外戦略は新たなステージへと突入することになるでしょう。
今回買収の対象となったニュー・ベルジャン社は、コロラド州に本拠を置く実力派の醸造所です。独自の感性で造られるビールは、画一的な味のビールとは一線を画す「クラフトビール」として熱狂的な支持を集めています。クラフトビールとは、伝統的な製法を守りつつ小規模な設備で造られるビールのことで、醸造家たちのこだわりが詰まった多様な味わいが特徴です。SNS上でも「大好きな銘柄がキリンの仲間入りをするなんて驚き」といった声が上がっています。
ニュー・ベルジャン社の看板商品といえば、マイルドな口当たりが魅力の「ファットタイヤ」や、個性豊かなホップの香りが楽しめる「ブードゥー・レンジャー」が挙げられるでしょう。現在、彼らは40種類以上のブランドを全米で展開しており、2018年の売上高は約2億ドル(日本円で約218億円)に達しています。買収後も現在の最高経営責任者が続投し、従業員の雇用も守られる方針が示されており、これまでのブランドイメージは大切に継承されていく見込みです。
全米規模の販売網を手に入れ、世界市場での存在感を高める狙い
キリンが今回の買収に踏み切った背景には、同社が推進する「選択と集中」の戦略が色濃く反映されています。2017年には苦戦していたブラジル市場から撤退する一方で、成長著しいアジア地域への投資を強化してきました。今回のニュー・ベルジャン社の取得は、オーストラリアやニュージーランドですでに大きなシェアを持つ同社のクラフトビール事業を、北米という巨大市場で一気に拡大させるための布石といえるはずです。
アメリカにおけるクラフトビールの存在感は凄まじく、2018年のデータによれば、ビール市場全体の金額ベースで約24%を占めるまでに成長しました。これは、消費者が単に喉を潤すだけでなく、ビールの背景にあるストーリーや品質の高さに価値を見出している証拠でしょう。キリンは、すでに資本提携している「ブルックリン・ブルワリー」の商品を、今回手に入れるニュー・ベルジャン社の広大な販売網に乗せることで、さらなる相乗効果を狙っています。
私個人としては、今回の買収は非常に理にかなった一手だと確信しています。独立性を重んじるクラフトビール文化と大資本の融合には、時にファンから厳しい目が向けられることもありますが、確かな品質を世界中に届けるには強固なインフラが不可欠です。日本国内でも2020年2月には東京都内に旗艦店がオープンする予定となっており、私たちが日常的に世界最高峰のクラフトビールを楽しめる日は、すぐそこまで来ているのかもしれません。
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