日本の飲料業界を牽引するキリンホールディングスが、大きな経営判断を下しました。2019年11月25日、同社は傘下のオーストラリア飲料事業を、中国の乳業最大手である蒙牛乳業(モンニウ・デイリー)へ売却することを正式に発表したのです。売却額は約6億豪ドル、日本円にして約456億円という巨額の取引となります。
今回の売却対象となるのは、キリンHDのオセアニア事業を束ねる「ライオン」の子会社、ライオン飲料です。この会社は2007年に約2940億円で買収したナショナルフーズが母体となっており、長年キリンの海外展開を支えてきました。しかし、市場環境の変化に伴い、2020年上半期中にはその全株式が中国資本へと引き継がれる見通しです。
インターネット上では、この決断に対して「かつての巨額買収を考えると寂しいが、選択と集中は避けられない」「中国企業の勢いが凄まじい」といった驚きの声が広がっています。特に2000年代の積極的な海外進出を知るファンからは、時代の移り変わりを実感するコメントが目立ちます。経営陣の迅速な損切りを評価する投資家も少なくありません。
業績停滞と「選択と集中」に見るキリンの決意
なぜ、キリンHDはこのタイミングで売却を決めたのでしょうか。その背景には、オセアニア地域での厳しい収益環境が挙げられます。ライオン飲料は、深刻な干ばつの影響で原料となる生乳の仕入れ価格が高騰し、利益を圧迫されていました。これを受け、2019年4月には約571億円もの減損損失を計上しており、抜本的な改革が急務となっていたのです。
ここで注目すべきは、キリンHDが「酒類事業」への集中を明確にした点でしょう。減損損失とは、資産の価値が下がった際に帳簿上の価値を削る処理のことで、企業の「負の遺産」を整理する痛みを伴う作業です。不採算部門を切り離し、得意とするビールなどのアルコール飲料にリソースを全振りする姿勢からは、生き残りをかけた強い覚悟が感じられます。
一方で、買い手となった蒙牛乳業の動向も見逃せません。彼らは2019年9月にも豪州の食品大手ベラミーズ・オーストラリアを約1100億円で買収すると発表したばかりです。中国市場での需要拡大を背景に、オセアニアの良質な乳資源を独占しようとする凄まじい攻勢を感じます。日本企業が去り、中国企業が台頭する構図が鮮明になっています。
個人的な見解を述べれば、今回の売却は「負け戦」ではなく、次なる成長のための「賢明な撤退」と捉えるべきです。グローバル競争が激化する現代において、過去の買収額に固執して決断を遅らせることは、グループ全体の首を絞めかねません。2019年11月27日現在のこの決断が、将来のキリンのブランド価値をより高める一歩になることを期待したいですね。
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