民主化を求める熱狂と混迷が渦巻く香港で、事態は大きな局面を迎えています。2019年11月19日、香港政府のトップである林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は記者会見を開き、デモ隊が立てこもりを続けていた香港理工大学から、学生ら約600人が退去したことを公表しました。このうち18歳以上の400人が逮捕されるという異例の事態に、SNS上では「若者たちの未来はどうなるのか」といった懸念の声が世界中から寄せられ、トレンドを席巻しています。
今回の騒乱で最も注目を集めているのが、日本人の身柄拘束です。2019年11月17日、大学周辺で抗議活動に加わっていたとみられる20代の日本人大学生が現地当局に拘束されました。菅義偉官房長官は19日の会見で、領事館職員が本人と面会した事実を明かしており、幸いにも健康状態に問題はないとのことです。異国の地で自由を叫ぶ若者の姿は、私たち日本社会にとっても決して他人事ではない重い事実を突きつけているのではないでしょうか。
現場となった理工大学は、先週から学生たちが校内を占拠し、周辺道路を封鎖するなど激しい抗議の拠点となっていました。ここで言う「占拠」とは、施設を物理的に支配し、自分たちの要求を通すための砦とする戦術を指します。しかし、2019年11月17日からは警察との衝突が激化し、負傷者は116名にまで膨れ上がりました。警察が大学を完全包囲したことで、逃げ場を失った学生たちの絶望感は、画面越しにも痛いほど伝わってきます。
岐路に立つ香港、区議会選挙の行方と民主主義の試練
大学内に取り残された人々を救い出そうと、立法会議員や校長たちが懸命の説得にあたりました。その結果、18歳未満の20代を含む若者約200人は、個人情報の記録を条件に帰宅が許されたものの、依然として100名以上が校内に踏みとどまっていると予測されます。2019年11月18日の夜から翌未明にかけては、彼らを支援しようとする市民が繁華街に集結し、火炎瓶と催涙弾が飛び交う戦場さながらの光景が繰り広げられました。
私は、この事態が単なる暴動ではなく、アイデンティティをかけた魂の叫びであると感じてやみません。法治と秩序は重要ですが、対話を拒むような強硬姿勢がさらなる悲劇を生んでいる側面は否定できないでしょう。林鄭氏は2019年11月24日に予定されている区議会選挙について、実施の意向を示しつつも、道路封鎖の解除などを条件に挙げています。これは選挙の延期をカードに使い、デモ隊の沈静化を狙う高度な政治的駆け引きといえます。
香港が守り続けてきた自由と民主主義が、いま大きな試練にさらされています。地下鉄駅の閉鎖や主要幹線の麻痺により、市民生活には多大な影響が出ていますが、それでもなお抗議の手を緩めない人々がいる現実を直視しなければなりません。一刻も早い平和的な解決を願うとともに、拘束された邦人学生を含むすべての若者たちが、不当な扱いを受けることなく安全に家族のもとへ戻れることを、一人の編集者として切に願っています。
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