アニメーションの歴史に燦然と輝く数々のヒーローたちに、魂を込めた声で命を吹き込んできた名優が、惜しまれつつもこの世を去りました。人気アニメ「ルパン三世」の石川五ェ門役などで知られる声優の井上真樹夫(本名・孝夫)さんが、2019年11月29日に急性心臓死のため80歳で逝去されたことが報じられました。葬儀については、故人の意思を尊重し、近親者のみで執り行われるとのことです。
井上真樹夫さんといえば、その唯一無二の低音ボイスが最大の魅力といえるでしょう。特に1977年から2代目として演じ続けた石川五ェ門は、斬鉄剣を振るう際のストイックさと、どこか浮世離れした粋な情緒を兼ね備えていました。彼が演じることで、五ェ門というキャラクターには「武士道」という名の深みが加わり、世代を超えて愛される象徴的な存在になったのは間違いありません。
時代を彩った宿命のライバルと宇宙の英雄
井上さんの活躍はルパン三世シリーズに留まりません。「巨人の星」では、主人公・星飛雄馬の宿敵である花形満を熱演されました。エリートでありながら内に熱い闘志を秘めた花形は、当時の子供たちにとって憧れの存在でした。また、「宇宙海賊キャプテンハーロック」では、孤独を愛し自らの信念に従って生きるハーロックを重厚に演じきり、大人の鑑賞にも堪えうるアニメ作品の土台を築き上げられました。
インターネット上では、この突然の訃報を受けて悲しみの声が次々と上がっています。SNSでは「また一つの時代が終わってしまった」「五ェ門の『またつまらぬものを斬ってしまった』という台詞は、井上さんの声でなければ完成しない」といった投稿が溢れ、トレンド入りする事態となりました。ファンのみならず、多くの後輩声優たちからも、そのプロフェッショナリズムを敬愛する追悼のメッセージが寄せられています。
ここで「急性心臓死」という言葉についても触れておきましょう。これは、心臓に持病がない、あるいは自覚症状が乏しい状態から、発症して24時間以内に急死することを指す医学的な呼称です。井上さんのように、最後まで現役として凛とした姿を見せてくださっていた方の突然の別れは、周囲にとって計り知れない衝撃を与えます。まさに、静かに刀を収めるような、潔すぎる最期だったのかもしれません。
編集者としての私見ですが、井上真樹夫さんの声は「男の美学」そのものでした。現代のアニメ界では多種多様な表現が増えていますが、彼のような「静寂の中に強烈な存在感を放つ」演技ができる役者は、そう多くありません。彼が遺した作品群は、映像がデジタル化され時代が移ろっても、色褪せることなく後世に語り継がれるべき文化遺産です。名優の安らかなるご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
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