【北海道・層雲峡】日本画の巨匠、後藤純男が描く「幽境妙音」の魅力とは?黄金に輝く大峡谷の絶景に迫る

北海道の雄大な自然をこよなく愛した日本画の巨匠、後藤純男氏。彼が描く作品は、単なる風景画の枠を超え、観る者の魂を揺さぶる静謐なエネルギーに満ちています。今回ご紹介する「幽境妙音(ゆうきょうみょうおん)」は、彼の画業における重要な転換点となった北海道の大地、そして「滝」への情熱が結晶となった至高の逸品です。

千葉県の寺院に生まれ、少年時代には僧侶としての修行も積んだという異色の経歴を持つ後藤氏。その生い立ちは、彼の芸術観に深い影響を与えました。彼は目の前の景色をただ写すのではなく、自分自身の内面と深く向き合う「内観」を通じて、万物に宿る仏のような輝きをキャンバスに捉えようとしたのです。

SNS上でも「圧倒的な金の表現に言葉を失う」「滝の音が聞こえてくるようだ」と、その神々しいまでの作風に感動する声が絶えません。特に北海道を題材にした作品群は、厳しい自然の中に潜む命の輝きを感じさせると評判です。かつて関東の穏やかな風景を描いていた若き日の彼を、真の表現者へと変貌させたのは、北の大地との出会いでした。

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運命を変えた夜汽車と、層雲峡の断崖絶壁

1960年03月、当時30歳だった後藤氏は上野駅から夜汽車に乗り込み、未知なる北の世界へと旅立ちました。その後10年近くにわたり、知床や根室といった北海道の果てを巡る中で出会ったのが、大雪山連峰の北麓に位置する「層雲峡(そううんきょう)」です。石狩川が長い年月をかけて削り出した、24キロメートルにも及ぶ巨大な峡谷でした。

100メートルを超える切り立った岩壁がそびえ立ち、そこから白糸のように流れ落ちる滝の姿は、まさに自然が造り出した芸術品です。この圧倒的なスケール感に魅せられた彼は、いつしか「滝屋」と呼ばれるほど、熱心に滝を描き続けるようになります。それは、厳しい自然の移ろいの中に「永遠」を見出そうとする挑戦の始まりでもありました。

私は、この後藤氏の姿勢に深い敬意を抱かずにはいられません。安定した地位に甘んじることなく、還暦を過ぎてから縁もゆかりもない上富良野に自身の美術館を構えるそのバイタリティは、まさに表現者としての鑑と言えるでしょう。彼の作品には、人生の荒波を乗り越えてきた人だけが持つ、力強さと優しさが共生しているように感じられます。

金箔が奏でる、伝統と革新のハーモニー

1966年に制作された「幽境妙音」において、後藤氏は日本画の伝統的な技法である「余白」の概念を、金を用いた独自の空間表現へと昇華させました。画面を大胆に占める厚塗りの金色の岩壁は、具象的な風景であることを超え、どこか宇宙的な広がりを感じさせる抽象性を帯びています。

ここで使われている「彩色(さいしき)」という専門用語は、岩絵具などの顔料を用いて描く日本画の伝統的な技法を指します。後藤氏は、高価な天然鉱石を砕いた絵具や金などを贅沢に使い、何層にも重ねることで、時の流れに左右されない重厚な質感を表現しました。その質感こそが、静まり返った谷間に響く「妙なる音」を視覚化しているのです。

この記念碑的な名作は、現在千葉県立美術館で開催中の特別展「日本画家後藤純男の全貌」にて鑑賞可能です。会期は2020年01月19日までとなっており、東京都現代美術館が所蔵する貴重な大作を間近で見られる絶好の機会です。北海道の厳しい冬の静寂と、黄金に輝く岩壁の迫力を、ぜひ会場で体感してみてはいかがでしょうか。

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