2019年11月27日の東京株式市場において、自動車部品メーカーであるファルテックの株価が猛烈な勢いで急騰しました。前日比で150円(17%)安という驚異的な上昇を見せ、制限値幅の上限となる1,025円で取引を終える「ストップ高」を記録しています。1,000円の大台を突破するのは約1年ぶりの快挙であり、市場のエネルギーが同社に一気に凝縮された形となりました。
この熱狂の引き金となったのは、同日に政府から発表された「乗用車への自動ブレーキ搭載を義務化する」という方針の報道です。政府は2021年度内にも、新型の乗用車を対象に導入を義務付ける構えを見せています。このニュースが駆け巡ると同時に、SNS上の投資家界隈では「ついに本命が来た」「関連銘柄を探せ」といった投稿が相次ぎ、期待感に満ちた高揚感が広がっていきました。
ミリ波レーダー市場の拡大が追い風に
自動ブレーキシステムにおいて、目とも言える重要な役割を果たすのが「ミリ波レーダー」です。これは電磁波を照射して対象物との距離や角度を測定する技術を指しますが、ファルテックはこのミリ波が透過する特殊なカバー製品を展開しています。レーダーの機能を損なわずに保護するこの部品は、まさに次世代の安全技術を支える縁の下の力持ちとして、今後の需要拡大が強く期待されているのです。
現在のところ、同社の連結売上高に占めるこれら関連製品の割合は5%に満たない水準にとどまっています。しかし、会社側はこれらを「中長期の成長を牽引する中核商品」と明確に位置づけており、国内外での販売体制を強化している最中です。2019年10月に起きたホンダ系サプライヤーの大型再編以来、自動車部品セクターへの注目は続いており、その流れを汲む形で物色の矛先が向けられました。
思惑買い先行の現状と今後の課題
市場では「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」といった新技術への関心が非常に高くなっています。そのため、現時点での業績寄与が限定的な材料であっても、株価が敏感に反応しやすい地合いが形成されているようです。今回のファルテックの爆発的な売買代金が前日の63倍にまで膨れ上がった事実は、まさに個人投資家による短期的な期待がいかに大きかったかを物語っているでしょう。
投資指標である予想PER(株価収益率)は4倍台と、東証1部の平均値である15倍台と比較しても極めて割安な水準にあります。ただし、国内における自動ブレーキの普及はすでにある程度進んでいるのが実情です。編集者の視点としては、単なる制度改正への期待感だけでなく、グローバル市場でのシェア拡大や、具体的な収益向上のシナリオが示されるかどうかが、持続的な株価上昇の分水嶺になると見ています。
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