育児と仕事の両立を目指す多くの女性にとって、見過ごせない司法判断が下されました。2019年11月28日、東京高裁は語学学校「ジャパンビジネスラボ」の元講師が訴えていた裁判において、一審の「無効」判決を覆し、雇い止めを「有効」とする逆転判決を言い渡したのです。
この裁判は、育休から復帰する際に正社員から契約社員へと雇用形態を変更した女性が、その後の契約満了に伴う雇い止めは不当だと主張したものです。SNS上では「育休明けの不利益な扱いは許されない」という憤りの声がある一方で、企業のルール遵守を求める冷静な意見も飛び交い、大きな注目を集めています。
阿部潤裁判長は判決の中で、女性が週5日勤務の正社員として戻った場合、業務に支障が出て自己都合退職に追い込まれる可能性があったと分析しました。そのため、週3日の時短勤務が可能な契約社員を選んだことには「合理的な理由」が認められ、男女雇用機会均等法が禁じる不当な扱いには該当しないと結論づけています。
ここで注目すべきは、雇用形態の変更が労働者の合意や実情に基づいているかという点でしょう。一般的に「合理的な理由」とは、社会通念に照らして納得感があり、客観的な裏付けがある状態を指します。今回のケースでは、育児との両立を優先した選択が、法的には正当なプロセスとみなされた形です。
服務規律と名誉毀損。問われる「労働者の振る舞い」
しかし、今回の逆転判決の決め手となったのは、単なる勤務形態の問題だけではありませんでした。裁判所は、女性が禁止されていた執務室での録音を行うなど、職場内のルールである「服務規律」に違反した行為を重く見ています。会社側が雇い止めを決めた背景には、こうした信頼関係の崩壊があったと推測されるでしょう。
さらに驚くべきことに、東京高裁は女性側に対し、会社への名誉毀損があったとして55万円の賠償を命じました。提訴時の記者会見における発言が、企業の社会的評価を不当におとしめたと判断されたのです。一方で、会社側も女性のプライバシーを侵害したとして、約5万円の賠償を命じられる異例の展開となりました。
2018年09月の一審判決では、雇い止めを無効として会社側に110万円の支払いを命じていただけに、今回の判断は労働者保護の流れに一石を投じる内容といえます。権利を主張することは重要ですが、同時に組織の一員としての誠実さや、公の場での発信の仕方も厳しく問われる時代になったと感じざるを得ません。
個人的な見解を述べれば、育児支援の拡充は社会の急務ですが、それは企業と従業員の間の「信頼」という土台があってこそ成り立つものです。今回の判決は、単にどちらが勝った負けたという話ではなく、働き方の多様化が進む中で、お互いの歩み寄りとルールの尊重がいかに不可欠であるかを改めて浮き彫りにしたのではないでしょうか。
コメント