日本の医療検査機器メーカーであるシスメックスに対して、株式市場からの熱い視線が注がれています。血液や尿の検査を行う装置に加え、その運用に不可欠な「検査試薬」を継続的に販売する「リカーリングビジネス(継続収益モデル)」が、同社の高い採算性を支える大きな武器となっているからです。2019年11月には株価が年初来高値を更新するなど、投資家からの期待は膨らむ一方でしょう。
同社は赤血球などを計測するヘマトロジー検査(血球計数検査)や、血液の固まりやすさを調べる分野において、世界シェアトップを誇る実力派企業です。アメリカのダナハー傘下であるベックマン・コールターや、ドイツのシーメンスといった世界の名だたる競合他社がひしめく中で、シスメックスは独自の強みを発揮しています。特筆すべきは、医療従事者が検体に触れずに済む安全設計を他社に先駆けて実現した点です。
こうした現場のニーズを汲み取った製品力は、驚異的な収益率として数字に表れています。2019年3月期までの5年間の平均営業利益率は21.3%という驚くべき水準を維持しているのです。一度機器を導入すれば、専用の消耗品である試薬が5年から7年にわたって安定的に売れ続ける仕組みが、盤石な経営基盤を築いていると言えるでしょう。SNSでも「ストックビジネスとしての強さが半端ない」といった声が上がっています。
中国の国家戦略「健康中国2030」がもたらす巨大な商機
シスメックスの視線は、今や海外へと向けられています。売上高の8割以上を海外が占める中、特に中国やインドといった新興国での需要が急拡大しています。生活水準の向上に伴い、先進国と同様にがんや糖尿病などの生活習慣病が深刻な社会問題となっているためです。2019年7月に中国政府が策定した国家戦略「健康中国2030」の行動計画も、生活習慣病の予防に重点を置いており、同社には強い追い風が吹いています。
中国市場においてシスメックスは、日本でいう大学病院に相当する最高ランクの「3級病院」ですでに圧倒的なシェアを獲得しています。さらに、感染症やがん診断に用いる「免疫測定装置」の普及にも注力しており、その成長戦略は専門家の間でも高く評価されています。2019年の夏には、長期投資で知られるイギリスの著名な資産運用会社が筆頭株主となったことも、同社の将来性を裏付ける大きなトピックとなりました。
2020年3月期は、人民元やユーロに対する円高の影響を受け、業績予想の下方修正を余儀なくされました。しかし、株式市場の反応は至って冷静です。現地通貨ベースでの収益は全地域で着実に伸びており、為替の影響を除けば実力は衰えていないと判断されているのでしょう。2021年3月期に向けた利益成長の予測も堅調で、一時的な減益をものともしない強さを見せています。
今後の鍵を握るのは、中国に数多く存在する中小規模の「2級病院」以下の市場開拓です。現在は現地メーカーがしのぎを削る激戦区ですが、シスメックスは製品ラインナップを広げることで、この巨大なボリュームゾーンに挑もうとしています。高度な検査を手軽に受けられる環境を世界中に届けることは、社会貢献であると同時に、同社のさらなる飛躍を約束する道筋となるに違いありません。
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