日鉄ステンレス株式会社は2020年01月08日、国内の流通業者向けに販売するニッケル系ステンレス鋼板について、2020年01月の契約価格を前月から引き下げることを決定しました。今回の値下げは2カ月連続の試みとなり、背景にはステンレスの主要原料であるニッケルの国際取引価格が大きく下落したことがあります。
具体的な値下げ幅を見てみると、システムキッチンなどの住宅設備機器に広く用いられる「冷延薄鋼板(冷間圧延という技術で薄く伸ばしたピカピカの鋼板)」が、前月比で1トンあたり1万5000円、率にして約4パーセントも安くなります。さらに、化学プラントのタンクなどに使われる頑丈な「厚鋼板」も、同様に1トンあたり1万5000円(約3パーセント)のプライスダウンとなりました。
一方で、原料にニッケルを配合しない「クロム系」の薄鋼板に関しては、2019年12月の契約価格のまま据え置かれる見通しです。このニュースに対し、SNS上では「家を建てる予定だからキッチン設備の価格に好影響が出ると嬉しい」「製造業のコスト負担が減りそう」といった期待の声が上がる半面、世界経済の先行きを不安視する声も聞かれます。
米中摩擦の影と半導体市場に見える光明
現在のステンレス市場を取り巻く環境は、長引く米中貿易摩擦の影響を色濃く受けており、国内外における物資の動きが鈍い状態が続いています。しかしその一方で、ITや半導体関連分野向けの出荷には、ようやく明るい復調の兆しが見え始めてきました。海外へ輸出される半導体製造装置などの需要が、日本国内でも徐々に高まっているようです。
かつては高水準が懸念されていた国内の在庫問題についても、ここにきて順調に調整が進んでいる印象を受けます。全国ステンレスコイルセンター工業会(JSCA)がまとめたデータによると、直近である2019年11月末時点で、ニッケル系冷延薄鋼板の在庫率は3カ月連続で「2カ月分」を下回りました。
この「2カ月」という数字は、市場の需要と供給がちょうど良いバランスを保っているかを示す重要な目安とされています。つまり現在の市場は、過剰在庫の山に苦しむ状態から脱却しつつあると言えるでしょう。これは、鉄鋼メーカー各社が2019年夏頃から必死に取り組んできた、生産や受注の調整がしっかりと実を結んだ成果にほかなりません。
編集部の視点としては、今回の値下げは製造コストを抑えたいユーザー企業にとって大いに歓迎すべき動きだと捉えています。半導体ブームの再燃という追い風を活かし、この価格改定が日本のものづくり産業全体の活性化につながる起爆剤となることを切に願うばかりです。
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