つぶらな瞳と愛らしい姿で私たちを癒やしてくれるアザラシですが、いま北の大地では深刻な問題が沸き起こっています。環境省は2020年1月22日に開催された中央環境審議会の小委員会にて、北海道の襟裳岬周辺に生息する「ゼニガタアザラシ」を2016年春からこれまでに計369頭捕獲したことを発表しました。このニュースはSNS上でも瞬く間に拡散され、「可愛いだけでは済まない現実がある」「漁師さんの生活を守るためには仕方のない措置なのかもしれない」といった、複雑な胸中を吐露する声が数多く寄せられています。
日本の沿岸に定住する唯一のアザラシであるゼニガタアザラシは、一時期は絶滅の危機に瀕していたものの、保護活動の実を結びえりも地域には約900頭が生息するまでになりました。しかし、この生息数の増加に伴い、地元の基幹産業である定置網漁で獲れるサケを食い荒らすという、甚大な漁業被害が深刻化しているのです。漁師の方々にとっては死活問題であり、自然の恵みと共生することの難しさを浮き彫りにしています。
生態系を守るための「個体数調整」とその手法とは
事態を重く見た環境省は、生態系のバランスを保ちつつ被害を抑える「個体数調整」に乗り出しました。これは特定の野生動物が増えすぎた際、環境や産業への悪影響を減らすために人為的に生息数をコントロールする専門的な管理手法です。2020年1月までに捕獲された369頭の内訳を見ると、1歳以上が88頭、0歳の幼獣が281頭となっています。
ここで興味深いのは、使用する漁網の種類によって捕獲されるアザラシの傾向が大きく異なる点でしょう。魚を誘い込む構造の「定置網」では、サケの味を覚えた執着心の強い大型の個体が捕まる傾向にあります。その一方で、魚の通り道に仕掛ける「刺し網」では、まだ海の危険や泳ぎに慣れていない学習能力の低い幼獣が大半を占めました。環境省は2020年度以降も定置網を中心とした捕獲を継続し、地域の生息数を800頭程度に抑える目標を掲げています。
なお、捕獲された個体のうち12頭は全国の水族館へと譲渡され、新たな環境で生きる道が与えられました。ただ命を奪うだけでなく、教育や研究の場へ繋げようとする試みには救われる思いがいたします。野生動物との共存は、決して綺麗事だけでは語れません。地域の産業を守りながら、いかにして尊い命と向き合っていくのか、私たちはこの課題を我が事として温かく、そして真剣に見守っていく必要があるのではないでしょうか。
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