台湾の蔡英文総統が再選!「脱・中国」で描く経済自立への挑戦と「窮台政策」の脅威とは?

2020年01月11日の夜、台北市にある選挙本部前は、割れんばかりの歓声に包まれました。圧倒的な支持を得て再選を果たした蔡英文総統は、集まった人々へ向けて「私たちは民主主義を守り抜いた。明日からはすべての困難を共に乗り越えよう」と、力強く呼びかけたのです。この歴史的な勝利に対し、SNS上でも「台湾の未来を守ってほしい」「これからの舵取りに期待する」といった熱いエールが数多く飛び交い、大きな盛り上がりを見せています。

今回の選挙では、親中派の野党候補を相手に817万票という途方もない票数を獲得し、まさに地滑り的な大圧勝を収めました。この結果は、台湾の人々が中国に対して抱く強い警戒心の表れであると言えます。しかし、本当の戦いはこれから始まるのではないでしょうか。経済面において中国への依存から脱却し、確固たる自立を証明できなければ、せっかく統一を拒絶した民意も、いずれ揺らいでしまうかもしれないからです。

実際のところ、台湾が抱える「中国の壁」は想像以上に高くそびえ立っています。2019年の輸出データを紐解くと、香港を含む中国向けの割合が40.1%と最も高く、蔡政権が発足した当時からほぼ変わっていません。さらに2018年における台湾企業の海外生産の46.7%、投資先の37%が中国に集中しているのが現状です。観光産業でも、中国からの訪問客数が269万人でトップを占めており、経済の深い部分が依然として結びついています。

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中国の「窮台政策」がもたらす液晶・半導体産業の危機

このように深く依存している関係性を突くかのように、中国側からの締め付けは日に日に厳しさを増しています。かつて世界の液晶パネル市場で「5匹の虎」と称えられた名門企業、中華映管が経営破綻に追い込まれ、2019年12月末に桃園市でひっそりと株主総会を開きました。元技術者の方は「大陸に優秀な人材を奪われて技術を吸収され、最終的には圧倒的な安値攻勢でトどめを刺された」と、悔しさを滲ませながら実態を語ってくれています。

ハイテク分野における圧倒的な競争力こそ、台湾が中国からの実質的な独立を維持するための最も重要な命綱です。それに対して中国は、2018年と2019年に相次いで台湾の高度人材を優遇して迎え入れる政策を打ち出しました。この動きは、台湾を経済的に干上がらせて空洞化を狙う「窮台政策(きゅうたいせいさく)」と呼ばれています。これは、台湾の経済や産業を意図的に困窮させ、力を奪っていく中国側の巧妙な戦略のことです。

この人材の引き抜きは、基幹産業である半導体分野でも水面下で深刻に進んでいます。台湾積体電路製造(TSMC)をはじめとする主要企業から、エリート技術者たちが次々と大陸へ渡っているのです。現地の半導体大手の首脳が「今すぐ手を打たなければ、20年後には中国勢に完全に圧倒され、窒息してしまうだろう」と強い危機感を募らせていることからも、事態の深刻さが伺えます。私は、この頭脳流出に歯止めをかける具体策が急務であると考えます。

国際貿易からの孤立を打破するTPPへの光明と課題

さらに頭を悩ませる問題が、世界的な地域貿易協定から台湾が孤立している点でしょう。貿易総額における自由貿易協定(FTA)締結国の割合はわずか約10%に過ぎません。日本の約4割や韓国の約7割という数字と比較すると、その低さは一目瞭然です。中国の激しい反発を恐れて、台湾と個別に協定を結ぼうとする国や地域が限られていることが原因となっています。不平等な競争を強いられている現状は、早急に是正されるべきです。

蔡総統は選挙戦の中で、この包囲網を突破するために「環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟に全力を尽くす」と繰り返し宣言してきました。日本政府は歓迎のポーズを示しているものの、加盟にはすべての参加国から同意を得なければなりません。台湾の経済政策をコントロールする国家発展委員会の陳美伶主任委員は、各国への個別のアプローチを開始したと明かしていますが、ここでも中国が裏で妨害に動く懸念が根強くくすぶっています。

ただ、激化する米中貿易摩擦の影響によって、一部の台湾企業が拠点を中国から国内へ戻す「回帰投資」の動きを見せているのは明るい材料です。2019年には、その申請額が約2兆6000億円にまで達しました。この力強い追い風が吹いている間に、産業の空洞化を防ぎ、新たな成長の土台を築けるかどうかが運命の分かれ道となるはずです。難題に立ち向かう蔡政権の手腕を、世界がじっと注視しています。

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