自動車の製造に欠かせない重要な金属素材の価格に、大きな変化の兆しが現れました。エンジンやボディーの素材として幅広く活用されている「アルミニウム二次合金」の国内価格が、ついに底打ちしたのです。2020年1月分の取引価格は、前月と比べて1トンあたり1000円値上がりしました。価格の上昇を記録したのは2018年6月以来のことで、市場には安堵の空気が広がっています。SNSでも「ついにアルミが動き出したか」「今後の自動車製造コストへの影響が気になる」といった声が上がっており、注目度の高さが窺えるでしょう。
ここで少し、専門的な仕組みを紐解いてみましょう。アルミニウム二次合金とは、回収されたアルミスクラップを一度溶かし、シリコンなどを混ぜ合わせて再び役立つように再生した金属のことです。新しく地金を作るよりもエネルギーを大幅に節約できるため、環境に優しいエコな素材として重宝されています。今回の価格指標となった「AD12・1」と呼ばれる合金の問屋卸値は、1トンあたり34万9000円前後となりました。わずか0.3%という微増ではありますが、長期の下落基調に歯止めがかかった意味は非常に大きいです。
中国の環境規制がもたらした供給不足の波
日本国内で流通しているこの合金は、実はその約4割を中国からの輸入に頼っています。今回の値上がりの背景には、中国政府が推し進める厳格な環境規制が深く関係しているのです。現地では有害物質による汚染や健康被害を防ぐ目的で、銅やアルミといった非鉄スクラップの輸入を段階的に厳しく制限してきました。これにより中国の合金メーカーは、製品を作るための「原材料が足りない」という事態に陥っています。2019年の冬からは、一部の工場で減産を余儀なくされる深刻な状況が続いている模様です。
具体的なデータを見ると、状況の深刻さがより鮮明になります。中国税関総署の発表によると、2019年のアルミスクラップ輸入量は前年から11%も減少しました。さらに、一部の規制が一段と強化された2019年7月から2019年12月までの半年間に限ると、前年の同じ時期に比べて減少幅が24%へと急拡大しています。原料不足に悩む中国のメーカーが日本への輸出価格を引き上げた結果、日本の市場でも1年半ぶりに上昇圧力がかかる形となりました。地球環境を守る施策が、日本のモノづくりに直接響いているのです。
新基準の導入とこれからの自動車産業への影響
今後の見通しですが、この上昇傾向は当面の間、緩やかに続くと予想されます。なぜなら、中国では2020年7月から非鉄スクラップの品質分類に関する新しい基準がスタートする予定だからです。金属の含有量に対する取り締まりが厳格化されるため、現地の減産体制はしばらく続かざるを得ないでしょう。私は、この動きを単なる原材料の高騰と捉えるべきではないと考えます。環境ファーストへと舵を切る国際社会において、サステナブルな素材の確保がいかに難しく、そして価値あるものになるかを示している好例ではないでしょうか。
一方で、日本国内の自動車需要は景気減速の影響を受けており、新車の売れ行きが少し鈍い状態にあります。日本アルミニウム合金協会のデータによると、2019年11月まで生産量は11カ月連続で前年を下回りました。大手メーカーの大紀アルミニウム工業所の幹部も、中国品の減少分を国内だけで補うのは難しいとしながらも、需要自体が控えめなため急激な品不足にはならないと分析しています。今後は激しい価格高騰こそないものの、じわじわと値を上げる展開になりそうですので、動向を注視していきましょう。
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