2020年2月3日、滋賀県の大津地方裁判所にて、ある歴史的な裁判の幕が上がります。湖東記念病院で男性患者を殺害した罪に問われていた元看護助手、西山美香さんが、長きにわたる戦いの末に再審初公判を迎えるのです。再審とは、一度確定した判決に誤りがある可能性がある場合、再び裁判をやり直す制度のことですが、今回は検察側が新たな有罪立証をしない方針を固めており、無罪判決が確実視されています。
現在40歳の西山さんは、滋賀県彦根市のリサイクル工場で働きながら、仕事の合間を縫って弁護士と綿密な打ち合わせを重ねてきました。待ちわびた日を前にして、彼女の心境は複雑です。かつて法廷で自身の無実を訴え続けたものの、それが聞き入れられなかったトラウマから、「またうまく話せず、無罪が出なかったらどうしよう」という不安に押しつぶされそうになることもあるそうです。「期待よりも心配が大きい。とにかく無事に終わってほしい」という彼女の切実な言葉には、17年という歳月の重みが滲んでいます。
なぜ、誤った判決は覆されたのか
事件が起きたのは2003年。当時、西山さんは任意の捜査段階で「呼吸器のチューブを抜いた」と自白し、逮捕されました。その後、懲役12年の判決が確定し、服役を終えて出所したのは2017年8月のことです。しかし、事態は劇的に動きます。2017年12月、大阪高等裁判所が新たな医師の鑑定書を「自然死の可能性」を示す証拠として採用し、自白についても警察や検察の誘導による虚偽である疑いを認め、再審開始を決定したのです。
この決定が最高裁で確定した後、2019年秋には決定的な局面を迎えました。検察側が「新たな有罪立証をしない」と表明したのです。弁護団に新たに開示された約190件の証拠の中には、西山さんが呼吸器を故意に外していないことを示す自筆の自供書や、自然死の可能性を示唆する捜査報告書が含まれていました。これらは、最初の裁判では一度も開示されなかったものです。私は、立証に不利な証拠を意図的に隠蔽した疑いがあるという事実に、強い憤りを感じざるを得ません。
真相解明の先にあるもの
SNS上でもこの件に関しては多くの反響が寄せられています。「ようやくここまで来たか」「なぜもっと早く証拠が開示されなかったのか」といった怒りの声や、長年苦しんできた西山さんを応援する温かいコメントが溢れています。司法のあり方そのものを問う厳しい意見も多く、この事件がいかに多くの人々の正義感を揺さぶっているかが分かります。
弁護団長を務める井戸謙一弁護士は、「全ての証拠が適切に検討されていれば、そもそも有罪判決にはならなかったはずだ」と強く批判しています。弁護団は真相究明も検討しましたが、15年以上の時が経過していることを考慮し、まずは西山さんの潔白を速やかに証明し、名誉を回復することを最優先に選んだのです。「裁判所が、なぜ私を犯人だと信じ込んだのかを知りたい」という西山さんの切なる願いに応えるためにも、判決が捜査や公判のどこに誤りがあったのか、その本質まで踏み込んで言及することを期待せずにはいられません。
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