2019年5月10日の午後2時15分ごろ、愛知県西尾市内の丁字路交差点において、あまりにも痛ましい交通事故が発生しました。横断歩道を渡っていた母親と抱っこされていた2歳の長男が、右折してきた乗用車にはねられたのです。この事故で、当時33歳だった母親の清水光紗さんが命を落とされ、幼い長男も軽傷を負いました。当時、清水さんはお腹に妊娠5週目相当の新しい命を宿しており、長女を幼稚園へ迎えに行く途中の悲劇だったことが分かっています。
事故から数ヶ月が経った2020年2月7日、名古屋地裁岡崎支部にて、自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた派遣社員の塩谷晃由被告の初公判が開かれました。裁判の中で被告は起訴内容を全面的に認めています。検察側の冒頭陳述によると、塩谷被告はドライブに出かけるために自宅を出発した直後、わずか数分でこの大事故を起こしてしまいました。日常の何気ない瞬間に、尊い複数の命が奪われる結果となってしまったのです。
今回の裁判における最大の焦点は、なぜ前方の歩行者を見落としてしまったのかという点でしょう。被告人質問において塩谷被告は、当時は就職活動の真っ最中であり、今後の再就職に対する強い不安を抱えていたと打ち明けました。運転中にそのことで頭がいっぱいになり、考え事をしていたため被害者に気づかなかったと釈明し、深く謝罪しています。「過失致死傷」とは、注意義務を怠ったことで人を死傷させてしまう犯罪を指しますが、精神的な焦りが重大な過失へ繋がったと言えます。
この裁判のニュースが報じられると、SNS上では瞬く間に大きな反響が巻き起こりました。ネット上では「明日は我が身として運転に集中しなければならない」「残されたご家族の無念を想うと言葉が出ない」といった、被害者への哀悼と加害者への厳しい声が溢れています。就職活動の不安やストレスは多くの人が経験するものですが、それを車のハンドルを握る瞬間にまで持ち込んでしまうことは、決して許される行為ではありません。
筆者は、今回の事故を単なる「一ドライバーの不注意」として片付けてはならないと考えます。車という巨大な凶器を動かしている以上、精神状態が不安定なときは運転を控えるか、普段以上の緊張感を持つべきです。不安や考え事で周囲が見えなくなる心の死角は、誰にでも訪れる可能性があります。命を奪う側に回らないために、私たちは車に乗り込んだ瞬間からすべての雑念を振り払い、目の前の道路と歩行者に全神経を集中させる義務があるのです。
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