2020年2月15日現在、世界中を揺るがしている新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大は、日本のものづくりを支える北陸地方の企業群にも暗い影を落としています。発生源である中国の製造拠点は操業再開のめどが立たない場所が多く、現地企業の活動停止も相次いでいるのが現状です。この未曾有の事態を受け、部品などの調達先を国内へ切り替えるという苦渋の決断を模索する動きも表面化してきました。さらに中国各地を結ぶ空路の欠航や減便も相次ぎ、経済の血流が滞り始めています。
SNS上では「ついに地元の有力企業にまで実害が出始めた」「身近な製品の発売延期があるかもしれない」といった、市民やビジネスパーソンからの不安の声が急増しています。特に製造業の現場からは「中国依存の危うさが露呈した」「これを機に国内回帰を進めるべきだ」という、これまでの調達網を見直す契機と捉える意見も目立っているようです。各自治体も国内での感染例の増加を受けて対応を急いでいますが、経済的な損失への懸念は日々強まるばかりでしょう。
福井市に本社を置く日華化学の江守康昌社長は、2020年2月13日の決算発表の席で深刻な表情を浮かべました。同社は感染者が1000人を超えた浙江省杭州市などに5カ所の拠点を持ち、繊維の染色剤などを生産しています。ここで重要なのが「サプライチェーン」という言葉です。これは原材料の調達から製造、流通、そして消費者に届くまでの一連のつながりを指す専門用語ですが、江守社長はこの網の目がどこまで復旧するか不透明であると強い危機感を募らせています。
石川県金沢市に本拠を置くアイ・オー・データ機器でも、深刻な事態に直面しているようです。同社は中国企業と共同で新しい電子黒板の開発を進めていましたが、渡航自粛によって現地へ社員を派遣できず、開発の立ち会いが不可能な状態に陥っています。2020年3月末に予定している発売日に間に合うか否か、まさに瀬戸際の攻防が続いている模様です。現地に行けないというもどかしさは、企業の成長スピードを大きく鈍らせる要因になりかねません。
さらに、アパレル関連のサカイオーベックスも、上海の拠点が休業を余儀なくされています。2020年2月10日の再開予定は延期され、行政の審査を待つ日々が続いており、フル稼働への道筋は見えていません。三協立山でも、上海の工場は何とか再開したものの以前の生産水準には届かず、天津市の工場にいたっては再開の見通しすら立たない状況です。こうした現地の麻痺状態が長引くことを見据え、間仕切り大手のコマニーのように、いち早く国内の取引先との調整に動く企業も現れました。
物流への悪影響も深刻さを増しています。陸運大手のトナミホールディングスや、富山新港での輸出入を担う伏木海陸運送からは、貨物の滞りによる先行きを不安視する声が上がっているのです。さらに空の便でも、キャセイパシフィック航空が小松と香港を結ぶ路線の運航見送りを取り決め、中国東方航空も小松と上海を結ぶ便を大幅に減便することを決定しました。移動の足が奪われることは、経済活動にとって致命傷になりかねないのです。
一連の動向から痛感させられるのは、特定の国に生産を過度に依存する「一極集中」のリスクの大きさです。世界の工場として機能してきた中国の停止は、北陸の地にも瞬く間にサプライチェーンの断絶という激震をもたらしました。今こそ企業は、コスト優先の調達から、災害やパンデミックに強い分散型の調達網への転換を真剣に考えるべきです。国内製造業の底力を維持するためにも、この危機をパラダイムシフトの契機に昇華させる視点が求められているのではないでしょうか。
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