現代社会において、学校や職場への足が遠のいてしまう「ひきこもり」の問題は、決して若者だけのものではありません。2019年09月24日現在、中高年層の孤立も深刻な課題として浮上しており、その支援の在り方が問われています。東京都文京区にある「茗荷谷クラブ」で20年以上にわたり運営に携わってきた青少年健康センター理事の井利由利さんは、回復への確かな手応えを感じながらも、焦りは禁物だと警鐘を鳴らします。
多くの人が「自立」という言葉を聞くと、真っ先に「働いてお金を稼ぐこと」を想像するかもしれません。しかし、長年現場で見守ってきた井利さんは、経済的な自立だけを目指す危うさを指摘しています。心のエネルギーが枯渇している状態で、無理に社会の荒波に飛び込んでも、再び傷ついて閉じこもってしまうリスクがあるからです。まずは、誰かと定期的に顔を合わせ、信頼に基づく人間関係を築くことこそが、再生への第一歩となります。
安心できる「居場所」がもたらす変化とSNSでの共感
茗荷谷クラブのような「居場所」は、社会復帰を目指す方々にとっての訓練施設であると同時に、ありのままの自分をさらけ出せる安全地帯でもあります。ここで言う「居場所」とは、特定の役割や成果を求められず、ただそこに存在することを許される空間を指します。SNS上でもこうした支援の姿勢には大きな反響があり、「自分を否定されない場所があるだけで救われる」「就労支援の前に、心のガソリンを満たす時間が必要だ」といった共感の声が相次いでいます。
井利さんが提唱する「段階を踏んだ回復」には、外の世界へ踏み出すための丁寧な準備期間が含まれています。まずは週に一度、決まった場所へ行くというリズムを作り、そこでの交流を通じて少しずつ自己肯定感を取り戻していくプロセスは、急がば回れの精神そのものです。一見すると遠回りに見えるこの過程こそが、長期的な視点での社会参加を支える強固な土台となるのでしょう。焦らず、自分のペースで歩みを進める勇気が今、求められているのです。
編集者の視点から述べさせていただくと、今の日本はあまりにも「生産性」という物差しで人を測りすぎているように感じます。一度レールを外れると戻るのが難しい社会構造の中で、井利さんのような「心の安全網」を広げる活動は、ひきこもり当事者だけでなく、将来に不安を感じるすべての人にとっての希望です。成功の定義を「年収」や「役職」ではなく、「他者と繋がり、自分らしくいられること」に置き換える文化を育んでいくべきではないでしょうか。
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