🎮**スマホ・PCゲームが病気に?WHOが認定した「ゲーム障害」**の実態と求められる対策

世界保健機関(WHO)は2019年5月、オンラインゲームなどの過度な利用によって日常生活に支障をきたす**「ゲーム障害」を、国際疾病分類(ICD)に基づく正式な病気として認定しました。この決定は、ゲームを楽しむ多くの人々にとって衝撃的なニュースといえるでしょう。しかし、これは単なるゲーム好きを否定するものではなく、患者が増加していると見られる中で、その正確な実態を明らかにし、適切な診断・治療法を確立するための大きな一歩として期待されています。

そもそもICDとは、各国が病気や健康状態を報告する際の「国際標準」となるものです。病気の分類や定義が世界で共通化されることで、統計的な分析が可能になり、患者の分布や傾向の把握、科学的根拠に基づいた診断・治療法の開発、さらには医療費の分析など、公衆衛生の向上に不可欠な役割を担っています。今回のゲーム障害は、最新版のICD-11において、「嗜癖(しへき)行動障害群」という項目に追加されています。このカテゴリには、すでに「ギャンブル障害」も含まれており、専門家は両者に多くの共通点があると指摘しているようです。

このICD-11は2018年6月に案が示され、準備期間を経て第72回WHO総会で採択されました。その効力は2022年から発生する予定で、医療現場や社会全体で具体的な対応が求められます。厚生労働省の2017年度の推計によれば、インターネット依存の中高生は約93万人に上るとされており、パソコンや据え置き型ゲーム機を含めた広義の依存者数は数百万人規模に達するとの見方もあります。このような状況の中、WHOによる疾病認定は、この問題への社会的な関心を一気に高めるきっかけとなるでしょう。

ゲーム障害の定義として今回決定された基準は、(1)ゲームをする時間や頻度を自分でコントロールできない、(2)ゲームが人生のあらゆることより最優先される、(3)問題が起こってもゲームをやめずに続けてしまう、(4)その結果、個人生活、家庭生活、学業、仕事などに重大な支障が出るといった状態が1年以上続くことです。ゲーム業界からは、この基準にすぐに当てはまってしまう人が多いのではないかと懸念の声も上がりました。しかし、久里浜医療センターの院長である樋口進さんは、「通常、ゲームが仕事や生活上のすべてに優先するところまではいかない」と述べ、神戸大学大学院教授の曽良一郎さんも、その依存状態は「薬物依存者が薬物を強く求め、手段を選ばず手に入れようとするのと類似している」と指摘しています。

実際にゲーム障害を経験した人の実態は非常に深刻です。たとえば、学生時代にゲーム障害になったMさんは、ひどい時には年間で約7500時間もゲームに費やしていました。6畳一間のアパートで「1日1食、ゲームをするか寝ているかの毎日だった」と当時を振り返っています。大学生活への不満や、生きる目標が見つからないことが原因で、インターネットでのゲーム仲間との交流に「居場所」を見つけ、安心感を覚えていたとのことです。近年では、中高生時代に始めたオンラインゲームをそのまま大人になっても続け、仕事を持つ成人患者も増えており、自由になるお金があるために年間1,000万円から2,000万円という巨額をゲームに費やすケースも見受けられるようになりました。

スポンサーリンク

ゲーム依存の脳と、限られた専門医療機関

ゲーム障害と見られる患者の脳内ではどのような変化が起きているのでしょうか。機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)などを用いた血流検査などのデータはまだ十分ではありませんが、前頭前野の機能が低下すると、衝動を抑える力が弱まり、ゲームやギャンブル、アルコールなどへの依存性が高まる傾向が明らかになってきているようです。前頭前野とは、思考や意思決定、感情の制御といった高度な精神活動を司る脳の重要な部位を指します。ただし、現時点では、脳画像だけで病気の有無を診断できる段階には至っていません。

現状では、ゲーム障害の診断には、米国の精神科医が開発した従来のチェックリストが使用されることが多く、厳密さに欠ける点が課題です。科学的な診断手法が確立されていないため、客観的なデータに基づいた治療を進めることは難しいのが実情といえるでしょう。曽良さんは、治療の第一歩として「本人がゲーム依存であるという『気付き』を促すことが大切だ」と述べています。Mさんも大学の授業に出られなくなる瀬戸際で、自分がゲーム依存だと自覚し、専門の病院を受診して治療を開始したそうです。

診断や治療には時間が必要であり、医師は複数回の面談を通じて患者さんの話にじっくりと耳を傾け、不安を和らげていきます。途中で通院をやめて症状がぶり返す患者もいますが、自分の問題に立ち返り治療を再開するケースも少なくありません。久里浜医療センターでは、朝から夕方まで運動や食事、会話などを通じて過ごす日帰りプログラムや、1泊2日程度の宿泊コースも提供されているようです。しかしながら、このような手厚い診断と治療を提供できる専門的な医療機関は、非常に限定されているのが現状といえます。

デジタル社会とゲームとの共存へ向けた提言

ゲーム障害は、スマートフォンやパソコン、ゲーム機といったデジタルデバイスがなければ成立しない病気です。しかし、現代社会において、これらのデバイスを完全に排除することは不可能です。学校教育にもパソコンが導入され、ゲーム感覚で学べる教材も増えている時代であり、デジタル技術の利便性は否定できません。だからこそ、ゲーム障害の発症リスクをどのように評価し、いかに予防していくのかが重要な課題となります。

私見を述べさせていただくと、WHOの疾病認定は、ゲームを悪者にすることではなく、過度な利用によって深刻な影響を受けている人々に、医療の手を差し伸べるための公的な枠組みを作るという点で、極めて意義深いといえるでしょう。ゲームは娯楽として生活を豊かにする側面を持つ一方で、その境界線を超えてしまうと個人の健康や社会生活を脅かす可能性があることを、社会全体が認識すべき時が来ています。

今後は、ICDの下で世界各国から集まるデータを基に、医療機関などが連携して研究を進め、ゲームとの適切な付き合い方、すなわち「適度に楽しみながらゲームと共存できる方法」**を探求する必要があります。ゲーム業界、医療界、教育関係者が協力し、予防策を講じることは、デジタル時代を生きる私たちにとって避けて通れない課題ではないでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました