2019年6月29日の時点で、サッカー女子ワールドカップ・フランス大会で初めて導入された「VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)」が、大きな論争を巻き起こしています。VARとは、主審の判定を映像で補助するシステム、いわば「映像の副審」のようなものです。この最新テクノロジーが試合の公平性を高める一方で、「介入が多すぎる」「判定に時間がかかりすぎる」といった批判の声が世界中から上がっています。特にSNS上では、試合の流れが頻繁に中断されることへのフラストレーションを訴える意見が多く見受けられました。
こうした状況に対し、国際サッカー連盟(FIFA)のコリーナ審判委員長は、「VARという画期的なツールがある以上、それを試合中に活用しないという選択肢はあり得ません」と、主審側の立場を説明しています。審判員としてかつて名を馳せた同委員長は、人間では判断が極めて難しい状況でも、テクノロジーによって真実を明らかにできるというVARの有効性を強く主張しています。しかし、その厳格すぎる適用が、時に感情論や議論の火種となってしまうのは皮肉な現象でしょう。
大会で最も大きな議論の的となっているのが、ペナルティーキック(PK)の判定、特にゴールキーパー(GK)の立ち位置に関する新しいルール適用です。2019年6月に規則が改正され、PKのキッカーがボールを蹴る瞬間まで、GKは「少なくとも片足はゴールラインに触れていなければならない」と明確化されました。今大会では、VARがこの規則を極めて厳しくチェックしており、決勝トーナメント1回戦までの全44試合において、失敗したPK6回のうち、3回がGKのラインオーバーを理由にやり直しとなってしまいました。
わずかに足先が線から離れただけでもVARは見逃さず、SNSでは「GKにとって酷すぎるルール変更ではないか」といった反響も多く、判定の厳格さが議論の対象となっています。コリーナ委員長は、このルール自体は以前から存在していたものの、単に厳密に守られていなかっただけだと指摘しています。しかし、ほんの数センチのGKの動きが、VARによって正確に捉えられ、それが試合結果を左右する場面が続出しているため、ファンや関係者の間で賛否両論が巻き起こっているのが現状です。
また、VARの導入は、オフサイドやハンドといった曖昧さが残りやすかった判定からも、「曖昧さ」を排除しつつあります。例えば、オフサイドの判定は、たとえ2センチの差であっても、20メートルの差であっても、違反は違反です。委員長は、人間の目では判断不可能な領域を、このテクノロジーによって誰の目にも明らかなものにできると強調しました。私は、VARの厳格な適用は、一見すると「やりすぎ」に見えるかもしれませんが、究極的にはサッカーというスポーツの「公平性」を極限まで追求する姿勢の表れであると考えます。時間がかかるというデメリットはありますが、誤審がもたらす不公平な敗戦という最大の悲劇を避けるための、必要な進化だと言えるでしょう。
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