2019年夏の俳句選:鮎飯や鱧の皮が織りなす、心温まる旬の情景とSNSで話題の季節感

2019年07月06日、茨木和生氏が選者を務める俳壇から、初夏の息吹を感じさせる素晴らしい作品たちが届きました。なかでも加藤賢さんの「鮎飯の骨がきれいに抜けにけり」という一句は、食卓の鮮やかな一瞬を見事に切り取っています。炊き込まれた鮎の身に箸を添えた際、スッと骨が抜ける心地よさは、その魚が天然物である証拠と言えるでしょう。こうした日常の小さなしあわせは、見ているだけでお腹が空いてくるようなリアリティに満ちています。

SNS上でも「鮎の骨が抜ける感覚、すごく共感できる」「夏の贅沢を感じる」といった声が上がっており、食を通じた季節の楽しみ方が多くの読者の心を掴んでいるようです。また、秋岡実さんが詠んだ「酌み交はし仲直りせり鱧の皮」という句も、非常に人間味に溢れていて魅力的ですね。鱧(はも)の身を削いだ後の皮を炙って刻んだ「鱧の皮」は、夏の訪れを告げる酒の肴として愛されています。これをきっかけに仲直りをするという描写からは、温かな交流が伝わります。

深刻な喧嘩ではなく、美味しいものを囲めば笑い合えるような、粋な関係性が目に浮かぶのではないでしょうか。一方、尾崎槙雄さんの句では「はたはた鮓(ずし)」を上品だと褒めて食す様子が描かれています。この「鮓」とは、魚を塩と米飯で乳酸発酵させた伝統的な保存食のことです。一口食べてからその繊細な味わいを称える姿には、作り手への敬意と、教養ある大人の振る舞いが感じられ、読み手としても背筋が伸びるような心地よさを覚えます。

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夏の静寂を破る鳥の音と人々の暮らし

自然の音に耳を澄ませた作品として、小川弘さんの「葭切の鳴かぬ日のなき夜明かな」が光ります。ヨシキリ(葭切)とは、5月の連休明け頃に渡来する夏鳥で、その鳴き声から「行々子(ぎょうぎょうし)」とも呼ばれる存在です。夜明けとともに葦原から響く力強い声は、夏のエネルギーそのものだと言えるでしょう。毎日欠かさず聞こえてくるその声に、作者は変わらぬ季節の巡りを感じ取っているのかもしれません。SNSでは「朝の静けさと鳥の声の対比が美しい」との感想も寄せられています。

個人的な見解を述べさせていただくと、今回選出された句には「記憶と再生」という共通のテーマが流れているように感じます。螢袋の花を見て両親を想ったり、縄文の村で古くから続く「虫送り(農作物の害虫を追い払う伝統行事)」に参加したりする姿は、私たちが忘れかけている日本人の原風景を思い出させてくれます。忙しい現代社会において、一筋の清涼剤のような役割を果たしているのではないでしょうか。2019年の夏を彩るこれらの言葉は、私たちの五感を優しく刺激してくれます。

最後に、田口昭子さんの「あく抜きのしてある蕨置きくるる」という句に見られる、ご近所付き合いの温かさにも注目したいところです。面倒な下処理を済ませたワラビを届けてくれるというさりげない優しさは、SNS時代のデジタルな繋がりとは異なる、手触りのある絆を感じさせます。梅雨寒の微震や、真上から降り注ぐウグイスの声など、2019年07月06日現在の空気感を凝縮した名句の数々。皆さんも、身近な季節の移ろいを探してみてはいかがでしょうか。

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