【超長期トレンド】50年債も登場!企業と投資家を繋ぐ 社債発行年限長期化の波と高利回り**の魅力

今、企業の資金調達を取り巻く環境で、大きな変化が起きています。それは、社債(しゃさい)の発行年限が、より長期化しているという動向です。社債とは、企業が一般の投資家や金融機関などから資金を借り入れる際に発行する債券(さいけん)のこと。債券は、あらかじめ決められた期日(満期)に、額面金額が投資家に払い戻される金融商品で、その期日までの期間を年限と呼びます。2019年に入ってからの普通社債の平均発行年限は、10年を超え、これは実に1991年以来、28年ぶりの水準なのです。

この長期化の背景にあるのは、金融緩和(きんゆうかんわ)の環境下で、少しでも高い利回り、すなわち投資収益を求める投資家の強い需要があるためでしょう。日本銀行によるマイナス金利政策の導入(2016年)以降、金利水準は歴史的な低水準にあります。さらに最近では、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が利下げを示唆するなど、世界的に金利低下の動きが加速しています。国内の10年物国債の利回りが2019年6月7日には一時マイナス0.135%まで低下したことからも、その状況がうかがえます。

このような状況下で、国が発行する国債(こくさい)よりも高い利息を得たいと考える投資家は、年限が長く、相対的に高い利回りが期待できる社債へと積極的に資金を振り向ける姿勢を強めているのです。「金利水準が低下し、国債に対する社債の上乗せ金利が縮小するなか、利回りを求める投資家が年限の長い社債を積極的に購入する姿勢が強くなっている」と、ニッセイ基礎研究所の徳島勝幸・金融研究部研究理事も指摘しています。上乗せ金利とは、国債の利回りに対し、企業がデフォルト(債務不履行)するリスクに応じて社債に加算される金利のことで、スプレッドとも呼ばれます。

企業のなかでも、特にJR東日本(東日本旅客鉄道)は、この超長期化の動きを牽引しています。同社は近く、国内では極めて異例の50年物社債を発行する予定です。これは、4月に三菱地所が発行した50年債に続く国内2例目となるもので、国が発行する最長の国債である40年物国債よりもさらに長期間にわたる超長期債です。鉄道会社は、車両や線路などの大規模な設備投資を長期計画で進めるため、資金調達の期間を長期化することで、より安定した経営基盤を築こうとしているのでしょう。

JR東日本の格付け(企業の信用力を示す指標)は、格付投資情報センター(R&I)で最上級から1段階低い「ダブルAプラス」と、非常に高い水準を維持しています。この高い信用力があるからこそ、50年という超長期であっても、投資家から十分な需要を見込めると判断したのだと考えられます。具体的な利回りや発行額については、今後詳細が詰められる見込みです。

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超長期化は企業と投資家に何をもたらすのか

社債の長期化は、企業にとっては資金調達の安定化という大きなメリットをもたらします。例えば、10年債を借り換える場合、10年ごとに市場の状況に応じて新たな条件で資金を調達し直す必要がありますが、50年債であれば、その手間とリスクを大幅に削減できます。特に、鉄道やガス、電力など、長期的な設備投資を必要とするインフラ系企業にとっては、将来のキャッシュフローに見合った安定的な資金計画を立てやすくなるでしょう。

実際、2019年にはJR東日本以外にも、大阪ガスや東京地下鉄(東京メトロ)が40年債を、三菱ケミカルホールディングスが30年債を発行するなど、長期化の流れは業界を問わず進展しています。普通社債の平均年限が10年を超えた1991年当時は、社債市場自体がまだ成熟しておらず、発行企業も電力会社やNTTなど一部の超大企業に限られていた時代でした。

一方で、投資家にとっては、長期債の購入は長期間にわたってリスクを抱えることを意味します。年限が長くなるほど、途中で金利が上昇したり、企業の信用力が低下したりするリスク(金利リスクや信用リスク)が高まります。例えば、50年の間に企業の経営状況が大きく変化する可能性は否定できません。そのため、投資家はより高い利回りを享受できる反面、その対価として長期間のリスクを引き受けることになります。この、企業と投資家双方の思惑が一致した結果が、今回の超長期化トレンドを形作っているのです。

私見ではありますが、この社債の長期化は、日本経済の「貯蓄から投資へ」という流れを加速させる一つのきっかけになると見ています。超低金利の現在、投資家は安全資産とされる国債では満足できず、企業が発行するリスクを伴う社債へと資金が向かうのは自然な流れでしょう。これは、企業にとってはより多様な資金調達の機会を、投資家にとっては国債では得られない高い利回りの機会を提供し、市場のダイナミズムを高める好ましい動きであると言えるのではないでしょうか。

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