野村証券、情報漏洩の代償。「主幹事外し」ドミノ倒しで正念場、日本郵政株の行方は?

野村証券の社員らによる情報漏洩問題が、実際のビジネスに深刻な影響を与え始めています。2019年5月27日には、コマツやホンダの金融子会社など4社が、相次いで社債発行の「主幹事」から野村証券を外したことが明らかになりました。SNS上でも「金融機関が信用を失ったら終わり」「当然の判断だ」といった厳しい意見が飛び交っており、事態の深刻さがうかがえます。

そもそも「主幹事」とは、企業が資金調達のために発行する「社債(企業版の借用証書)」や株式を市場に売り出す際、中心的な役割を担う証券会社を指します。いわばプロジェクトリーダーとして、販売戦略の策定から引き受けまでを担う重要なポジションです。今回、野村社員が東京証券取引所の市場再編に関する機密情報を顧客に漏らしたことで、金融庁は近く業務改善命令を出す方針です。多くの企業はコンプライアンス(法令遵守)の観点から、行政処分を受けた企業との取引を控える内規を持っており、これが「野村外し」の連鎖につながっているのです。

具体的な動きとして、ホンダファイナンスは2019年6月に予定する総額600億円の社債発行で野村証券を外し、SMBC日興証券、大和証券、みずほ証券の3社体制に変更しました。また、不二製油グループ本社も、財務戦略上重要となるハイブリッド債(株式と社債の中間的な性質を持つ債券)の筆頭主幹事を、野村証券から大和証券へと切り替えています。野村と関係が深かったコマツや、東京地下鉄(東京メトロ)も追随し、大阪ガスに至っては2019年5月24日の経営陣による謝罪会見当日に、いち早く変更を決定していました。

野村証券は、2018年度の社債引受額で全体の約20%を占める業界2位の強者でした。しかし、この「野村外し」が長引けば、みずほ証券や三菱UFJモルガン・スタンレー証券などが争うトップ争いの勢力図が大きく変わる可能性が出てきました。影響は新しく発行される社債だけにとどまりません。投資家の間でも「金融庁に再発防止策が受理されるまで、野村には既存の債券売買の注文も出せない」として、取引自体を手控える動きが広がっています。

そして今後の最大の焦点は、この問題が社債から「株式」の大型案件に波及するかどうかでしょう。特に注目を集めているのが、2019年秋に予定されている「日本郵政株」の第3次売り出しです。これは財務省が保有する国有財産を売却する国家的なプロジェクトであり、主幹事証券には極めて高い信頼性が求められます。内部管理体制の不備で処分を受ける野村証券は、主幹事として不適格とみなされる公算が大きくなっています。

日本郵政株の売り出しは1兆2000億円を超える規模が見込まれており、もし野村証券が外れれば、「この巨大な規模を野村抜きで市場が消化できるのか」と、ライバルである同業他社からも懸念の声が上がるほどです。野村ホールディングスは、2019年3月期に1000億円超という巨額の最終赤字を計上し、リストラなど構造改革のまっただ中にあります。今回の情報漏洩問題は、まさに「泣きっ面に蜂」であり、業務改善のスピードと失った信頼の回復が急務となっています。

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